サンタンデールの「エル・サルディネーロ地区」は、観光の中心地であり、歴史的にも文化的にも見どころが多い魅力的なエリア。
かつてこの海岸は、イワシ(sardinas)の大群が押し寄せる場所であり、地元の漁師たちが網を投げ入れていた。そのことから「イワシの場所」を意味する「サルディネーロ」と呼ばれるようになった。
スペインの「黄金時代」に豪華なホテル、別荘、そして「グラン・カジノ」が次々と建設され、ヨーロッパ各地から富裕層が集まる華やかなリゾート地へと変貌を遂げた。

カジノ『グラン・カジノ・サルディネーロ(Gran Casino Sardinero)』
建設当初は、上流階級の社交場として、カジノ、劇場、レストラン、ダンスホールなどが併設されていた。
1916年の開館からスペイン内戦が始まる1936年までが、このカジノの黄金時代。著名な政治家、芸術家、貴族などが集まり、舞踏会やコンサート、演劇などが盛んに行われました。
スペイン内戦中、カジノは閉鎖されたが、民主化が進んだ1978年に、カジノとしての営業が再開され現在に至る。
豪華で洗練された雰囲気を醸し出している。

1870年頃に建設され、現在は閉館中の『Hotel Paris』
このホテルのある地域「El Sardinero(エル・サルディネロ)」地区は「建築保護地区(Conjunto Histórico Artístico de El Sardinero)」指定された区域内であり、その特殊な保護規定に従う必要がある。そのため、閉館した今も美しく保たれている。


『ホテル・オユエラ(Hotel Hoyuela)』
アール・ヌーヴォーやフランス折衷主義の影響を受けた、優雅な建築様式が特徴。



アパートメント(集合住宅)。この建物のデザインは、船や海をモチーフにしたマリンスタイルを強く意識しているように見える。白い壁と、船のデッキを思わせる濃い青の縁取りや手すりが特徴的。テラスも船の甲板のように広々としており、サンタンデールの海岸沿いの景観に溶け込むように設計されている。


「エディフィシオ・ラ・セダ(Edificio La Seda)」集合住宅(アパートメント)。
この建物の最も顕著な特徴は、何層にもわたって並ぶ、半円形(または円形)のバルコニー。この独特でリズミカルなデザインは、20世紀後半の建築を象徴しており、サンタンデールの街並みの中でも非常に目を引く。

コレヒオ・サン・アグスティン(Colegio San Agustín)に併設されている教会、「サン・アグスティン教会(Iglesia de San Agustín)」。
20世紀前半にヨーロッパとアメリカで発展した、伝統的な建築様式から脱却した新しい建築の潮流『モダン・ムーブメント建築』影響を強く受けている。

サンタンデールは別荘(セカンドハウス)として利用する方が非常に多い場所。特にマドリードなどの内陸部に住む人々にとって、サンタンデールの涼しい気候と美しい海岸は、夏の暑さを避けるための理想的な場所だ。
モダンなデザインの集合住宅(アパートメント)の多くは、サンタンデールに住む人々の住居としてだけでなく、「セグンダ・レジデンシア(segunda residencia)」と呼ばれる第二の住居(別荘)として利用されている。夏の間だけ家族で過ごしたり、週末にリフレッシュのために訪れたりする人々で賑わう。
セレブビーチ『エル・サルディネロ(El Sardinero)』

エル・サルディネーロ(El Sardinero)は、スペインで最もエレガントなビーチリゾートの一つとして知られている。特にマドリードなどの内陸部に住む人々にとって、サンタンデールのビーチは夏の避暑地として非常に人気がある。
スペイン国内からの観光客が中心だが、美しいビーチや歴史的な街並みを求めて、ヨーロッパ(特にフランスやイギリス)をはじめとする海外からの観光客も訪れる。
夏以外のシーズンは、夏のピーク時と比較すると落ち着いた雰囲気になるが、閑散としているわけではない。



ビーチの近くにある監視塔の絵は、カンタブリア地方出身の芸術家マヌエル・アンヘル・オリス(Manuel Ángel Orviz)によって描かれたもの。ユニークな絵(壁画)は非常に目を引くデザインだ。

「ピキオ庭園(Jardines de Piquío)」
庭園の先端は海に突き出ており、そこからビスケー湾や海岸線、マグダレナ半島まで一望できる素晴らしい展望台になっている。庭園の雰囲気: 手入れの行き届いた緑や花々が美しく、散策を楽しむのに最適な場所です。ベンチも設置されており、ゆったりと景色を眺めながら過ごすことができる。地元の人々や観光客にとって、ピクニックや散策、読書など、リラックスして過ごすための憩いの場となっている。

奇妙でありながらも美しいその姿は、多くの観光客を惹きつけるユニークな存在。写真の被写体としても人気が高く、サンタンデールの観光地としての魅力を一層引き立てている。

サンタンデールのマグダレナ半島には、まるで生き物のように複雑な樹皮を持つ松の木が立ち並んでいる。

この松の木は、正式には「タマリクス」または「タマリスク」と呼ばれる植物の一種。塩分に強いため海岸沿いでよく育ち、潮風に吹かれながら長い年月をかけて独特な形に成長した。その姿は、この地の風景に欠かせない重要な要素となっている。

スペイン・サンタンデールのユニークな松の木。
長い時間をかけてこの場所の気候と環境に適応し、独特な景観を作り上げてきた。ピキオ庭園やマグダレナ半島の歴史的・文化的価値を形成する一部として認められているため、安易に伐採されることはない。

この地域が持つ地質と、ビスケー湾の荒波が長い時間をかけて作り上げた、自然の芸術作品と言える。

この断崖絶壁は、サンタンデール湾と外洋を分ける岬、カボ・メノル (Cabo Menor) 。ここは「カボ・メノル展望台」として知られており、サンタンデールの中でも特に美しい景色が楽しめる場所。写真に写っているカンタブリアの旗が、この場所のランドマークとなっている。

この孤立した岩は、サルディネロ海岸沖にある岩場。波の浸食によって長い年月をかけて形成されたもので、サンタンデールの海岸線の特徴的な景観の一部となっている。この岩には植生があり、自然の力強さを感じさせる。

岩場に設置されている人魚の像。
探検家ビタル・アルサルが1980年代にメキシコで建造した船「マリガランテ」の船首像(フィギュアヘッド)だったもので、コロンブスが新大陸へ航海した際の旗艦「サンタ・マリア号」を記念して作られた。
この「マリガランテ」号は後にサンタンデールに寄贈され、その船首像である人魚の像がマグダレーナ半島に飾られることになった。

サンタンデールがあるカンタブリア州の海岸には、鉄分を多く含む岩石が広く分布しおり、鉄分は空気に触れて酸化することで赤褐色になる。サンタンデールだけでなく、スペイン北部のビスケー湾に面した地域でよく見られる特徴。

海を眺めるだけのベンチがぽつんと置いてある。

野外博物館「Muelle de las Carabelas(Museo El Hombre y la Mar)」
サンタンデール出身の著名な冒険家であり船乗りのバイタル・アルサール(Vital Alsar)が太平洋横断の冒険に使用した3隻のレプリカが展示されている。
彼は、古代の航海術や船を使って大西洋や太平洋を横断する、数々の壮大な冒険を成し遂げたことで知られている。特に有名なのは、古代人が大陸間を航海できた可能性を証明するために行った、いかだでの航海。


「パラシオ・デ・ラマグダレナ(Palacio de La Magdalena)」
ビスケー湾とサンタンデール湾を分けるマグダレナ半島に位置しており、海に面した絶景の中に建ち、美しい海岸線やサルディネロ・ビーチを散策する拠点としても最適。



マグダレナ半島を巡る観光列車。


マグダレーナ宮殿(Palacio de la Magdalena)
1909年から1911年にかけて、スペイン国王アルフォンソ13世と王妃ビクトリア・エウヘニアの夏の離宮として建設された。イングランドの建築様式と、フランスの城郭建築、そしてカンタブリア地方特有の「山岳様式(Estilo Montañés)」が融合した、非常にユニークなデザインが特徴。現在は観光名所として一般公開されている。