カサ・バトリョ(Casa Batllo)

カサ・バトリョ(Casa Batllo)

有機的で鮮やかな色彩のファサードが特徴の住宅で、骨のようなバルコニーやモザイク装飾が印象的。通称「骨の家」。

ガウディとバトリョ家の野心

アントニ・ガウディがこの邸宅の改築を引き受けた際、施主であるジョセップ・バトリョ・イ・カザノバスは当初、既存の建物を完全に取り壊して建て直すことを希望していた。しかしガウディは建物の構造を維持したまま大規模な改修を行う手法を提案し、現在の独創的な姿へと変貌させた。バトリョ家はこの邸宅を通じて自らの社会的地位を誇示しようとしたが、当時のバルセロナ市当局からは建築基準を大幅に逸脱しているとして何度も工事の中止勧告を受けている。特に建物のファサードが歩道に突き出している点や、全体の容積が規定を超えている点が問題視された。

骨の家と呼ばれる理由と背景

この建物は地元で「骨の家」という異名を持つが、これはバルコニーの支柱が骨のように見え、窓枠が頭蓋骨を連想させることに由来する。このデザインにはカタルーニャの守護聖人である聖ジョルディの竜退治伝説が反映されているという説が有力。屋根の部分は竜の背中を表現しており、外壁に埋め込まれた色とりどりのガラスやタイルの破片は、竜の鱗や犠牲となった人々の骨を象徴しているとされる。一方で、このあまりに奇抜な外見は完成当時、周囲の住民や建築家たちから激しい批判を浴びた。美的な調和を乱す不気味な造形物として扱われ、嘲笑の対象となっていた時期がある。

カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 建物のファサード部分を通りから見上げた構図
建物のファサード部分を通りから見上げた構図。壁面は色とりどりのガラスやセラミックの破片で覆われ、バルコニーの手すりは鋳鉄製で仮面のような形状をしている。屋根の一部には鱗のような形状の瓦が使用され、龍の背中を表現している。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 夜間にライトアップされた建物の正面外観とサロンの窓
夜間にライトアップされた建物の正面外観とサロンの窓。砂岩を彫り込んで作られた骨のような形の支柱が特徴的であり、窓の上部には色鮮やかなステンドグラスが並び、昼間とは異なる色彩の対比が強調される。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) メインフロアのサロン内部
メインフロアのサロン内部。木製の大きな窓枠と色とりどりの円形ガラスが組み合わされており、通りを見下ろすことができる。この場所の窓は重りを利用した上下開閉式の特殊な構造を採用している。

光を計算した内部構造の知略

中央の吹き抜け部分に使用されているタイルは、上部が濃い青色で下部に向かうにつれて色が薄くなっている。これは上から差し込む日光の強さを考慮し、建物内のどの階にいても光の反射が均一に見えるように計算された結果。さらに、窓の大きさも階層によって細かく調整されており、光の取り込み方を数学的に制御している。ガウディは単に装飾性を追求したのではなく、通気や採光といった住居としての機能性を極限まで高めるための工夫を随所に凝らした。

カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 光庭と呼ばれる吹き抜け部分であり、上部から下部へ向けてタイルの青色の濃淡を変化させて採光を調節している。
光庭と呼ばれる吹き抜け部分であり、上部から下部へ向けてタイルの青色の濃淡を変化させて採光を調節している。壁面にはセラミックタイルが使用され、窓の大きさも光の入り方を均一にするため階層ごとに異なっている。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 一階のサロンにある木製の建具と色鮮やかなステンドグラスの装飾。
一階のサロンにある木製の建具と色鮮やかなステンドグラスの装飾。ステンドグラスは円盤状のガラスを組み合わせたデザインで、木材の曲線的なフレームに嵌め込まれており、外からの光を室内に複雑に取り込む構造を持つ。

所有権の変遷と商業化の裏側

バトリョ家が去った後、この建物は一時期、保険会社の事務所として利用されていた歴史がある。その期間中、内部の装飾や構造の一部が事務作業に適するように変更され、ガウディ本来の意図が損なわれていた。現在の所有者はチュッパチャプスで知られるベルナット家であり、1990年代に入ってから大規模な修復作業が行われた。現在ではバルセロナ屈指の観光資源となっているが、入場料が他のガウディ建築と比較しても非常に高額に設定されている点は、地元住民や観光客の間でしばしば議論の対象となる。かつては個人の邸宅であり、一時はオフィスビルとして機能していた場所が、現在は徹底的に管理された商業施設へと変貌を遂げている。

カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 地階部分の天井に施されたトレンカディスという手法による破砕タイルのモザイク装飾
地階部分の天井に施されたトレンカディスという手法による破砕タイルのモザイク装飾。中央には太陽を模したような円形の意匠があり、周囲を囲む石造りの柱が天井の波打つような曲線を支える構造的な特徴が見て取れる。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 天井一面に描かれたフレスコ画と独特の形状をした柱の接合部
天井一面に描かれたフレスコ画と独特の形状をした柱の接合部。石膏や漆喰を用いた柔らかな曲線の天井には淡い色彩の絵画が施され、植物や生物を連想させる有機的な造形によって室内の角が排除された設計がなされている。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) アントニ・ガウディがカサ・バトリョのために設計した木製のベンチ
アントニ・ガウディがカサ・バトリョのために設計した木製のベンチ。エルゴノミクスに基づいた形状をしており、硬い木材を用いながらも人間の身体のラインに適合するように曲線が削り出されている実用的な家具である。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 天井の中央部分に配置された石膏による渦巻き状の装飾。
天井の中央部分に配置された石膏による渦巻き状の装飾。水の波紋を表現したような立体的な造形は職人の手作業による仕上げで、室内の照明器具を取り付ける基部としての機能も兼ね備えており、建物全体の海洋的なテーマを反映している。
カサ・バトリョ(Casa Batllo) バルセロナ(Barcelona) 建物内に展示されている当時の家具一式
建物内に展示されている当時の家具一式。ソファや鏡のフレームには木材が使用され、アール・ヌーヴォーの影響を受けた曲線的なラインで統一されている。床面には白と黒の大理石をチェッカーフラッグ状に配置したタイルが敷かれている。

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