コスモ・カイシャ(CosmoCaixa バルセロナ科学博物館)
バルセロナの北部、ティビダボの丘のふもとに位置する「コスモ・カイシャ(CosmoCaixa)」。スペインを代表するこの科学博物館は、歴史的建造物の記憶を継承しながら、大規模な拡張を経て現在の形となった施設。展示の規模感や没入を重視した設計に大きな特徴がある。

盲人施設から博物館への変遷と建築の拡張
建物の起源は1904年から1909年にかけて建設された「盲人のための養護施設」。このレンガ造りの近代建築は、1979年まで実際に運用されていた。その後、1981年にスペイン初のインタラクティブな科学博物館として開館したが、展示や設備の老朽化に伴い1998年に一度閉館。
5年間の改修期間を経て2004年に再オープンした現在の建物は、元の建築の4倍の面積に拡張されている。歴史的なレンガ造りの外観を維持しつつ、地下数階に及ぶ広大な展示空間や中央の巨大な螺旋通路といった現代的な構造を組み合わせた建築。屋外の「科学広場」からはバルセロナの市街地を一望でき、建築デザインそのものが一つの見どころとなっている。

デザイン性は国際的にも高く評価
コスモ・カイシャの展示スタイルは、子供から大人までが科学を「体験しながら学ぶ」ことを最重視したもの。このデザイン性は国際的にも高く評価されており、2006年に「ヨーロッパ博物館賞」、2021年には「ケネス・ハドソン賞」を受賞している。
単に知識を提示するだけでなく、実際に手を動かし、物理現象や生物の仕組みを観察できる仕組みを随所に配置。日本の一般的な科学館と比較しても、展示物の希少性や教育的価値、そして空間全体を使った展示の規模は非常に大きい。


アマゾンの生態系を再現した氾濫した森
この博物館における最大の目玉が、1000平方メートルを超えるスペースに構築された「氾濫した森(Bosc Inundat)」。ブラジルのアマゾン熱帯雨林の生態系をそのまま再現することを目的に構築された空間。
展示室内には、現地から運ばれた本物の植物に加え、ピラルクやカピバラ、アリクイ、ワニ、毒カエルなど100種以上の生き物が実際に生息。15分ごとに人工的なスコールを降らせることで、現地に近い湿度と温度を維持している。
また、この展示は視点の多様性が確保されている点も特徴。ガラス越しに水中、地上、そして空中(鳥の目線)という3つの階層から熱帯雨林を観察できる構造。多角的に生態系を把握できる設計は、世界的に見ても珍しい。

100年以上前の建築遺産を継承しつつ、現代の科学教育の場として機能するコスモ・カイシャ。バルセロナにおいて、科学と歴史、そして自然環境を同時に学べる拠点となっている。



コスモ・カイシャの「カイシャ」とは?
スペイン最大の金融グループである「カイシャバンク」を母体とする、ヨーロッパ有数の規模を誇る民間財団「ラ・カイシャ財団(Fundación ”la Caixa”)」。
単なる企業の慈善団体という枠を超え、スペインやポルトガルの社会・文化・教育において極めて大きな影響力を持っている。
カイシャ・フォーラム(CaixaForum)という美術館・文化センターをバルセロナやマドリードなどスペイン主要都市で運営している。これらは、世界的な美術館(プラド美術館や大英博物館など)との提携による質の高い特別展を開催することで知られている。
















