「世界基準の現代アート」と「泥臭い産業の歴史」、そして「強固なバスク文化」の3層が重なり合っているのがビルバオの文化シーン。グッゲンハイムが「華やかな表舞台」なら、他の美術館や博物館は、この街がなぜここまで劇的に生まれ変われたのかという「物語の深層」を教えてくれる存在といえる。
ビルバオ美術館(Bilboko Arte Ederren Museoa)

近現代のアートで知られる「グッゲンハイム美術館」から徒歩圏内にあり、こちらは12世紀から現代までを網羅する幅広いコレクションを特徴としている。
ビルバオ美術館は1908年に設立され、1945年に現在の場所に開館。歴史的な名画からバスク地方独自の芸術まで、1万点を超える作品を所蔵。スペイン国内ではマドリードのプラド美術館、ティッセン=ボルネミッサ美術館に次ぐ規模と質の高さを誇ると評されている。

ネオクラシック様式の旧館と近代的なオフィスビル風という、異なる時代の建築様式が融合した興味深い構造になっている。
アスクナ・セントロア(Azkuna Zentroa-Alhóndiga Bilbao)

1909年に建設されたワイン貯蔵庫を再生し、43本の独創的な柱が並ぶ空間へと変貌したのがアスクナセントロアである。このプロジェクトは、単なる施設の改修ではなく、市民が日常的に文化活動へ参加できる多機能な公共空間の創出を目的として開始された。

最大の特徴である43本の柱は、世界各地の建築様式を採り入れ、文化の多様性を示す象徴として配置されている。設計に携わったフィリップスタルクは、建物の中心部を人々が最短距離で通り過ぎる効率的な通路ではなく、あえて1本ごとに異なる意匠を施すことで、歩く速度を落とさせ、五感を刺激する文化の森を構築した。

43本の柱は「人類の歴史、文化、建築の多様性」を象徴しており、中世風、ルネサンス風、モダン、あるいは中国風など、一本として同じものはない。

大理石、レンガ、テラコッタ、ブロンズ、セメントなど、さまざまな素材が使われている。

東洋の文化や神話を感じさせるこの柱も、多様性を表現する重要なピースの一つ。

広大なアトリウム(6,193平方メートル)に配置された光るベンチ。夜や照明を落とした時間帯には、広場全体を幻想的な雰囲気で包み込む。

現在は現代アートの展示会や映画館、メディアテカと呼ばれる図書館、さらには屋上のスポーツ施設までを含む市民の日常空間として機能している。歴史的なレンガ造りの外壁を維持しながら、内部に多様な活動を受け入れる広大なアトリウムを設けたこの建築は、スペインにおける都市再生の成功例の1つといえる。


歴史的な街並みと、錆びた鉄(コルテン鋼)のような質感を持つ現代的なオブジェが共存しており、ビルバオらしい「再生」のイメージを象徴している。
ビスカヤ考古学博物館(Archaeological Museum of Biscay)
もともとはビルバオとレサマを結んでいた旧鉄道駅の校舎を利用しており、2009年に開館した。約3,000平方メートルの広さを持ち、ビスカヤ地方の考古学的な遺産を収集・保護・調査する役割を担っている。

この博物館は観光向け施設というより研究と収蔵が主目的なので、「充実した展示」を期待して行くと物足りなく感じやすい。

歴史の核心は、農耕や牧畜、集落単位の生活史にあり、日用品や破片が中心になる。ビスカヤ県内の発掘調査で出た遺物を体系的に保存することが最優先で、展示はその一部に限られている。

説明文を丁寧に読まないと価値が伝わりにくい展示構成。一般的な旅行者や、スペイン文化に興味を持ち始めた段階の人には、正直ハードルが高い。

地味な展示物をフォローするかの如く、絵は力作揃い。
ビルバオ宗教美術館(Museum of Sacred Art of Bilbao)

16世紀に建造された旧エンカルナシオン修道院を改装して造られたこの美術館は、建物自体がスペインの歴史を伝える重要な文化財である。12世紀のロマネスク様式から現代に至るまで、800年を超える歳月の宗教芸術を網羅しており、展示数は500点以上に及ぶ。かつて修道女たちが生活していた空間がそのまま展示室として機能しており、当時の建築構造を間近で見ることができる。


展示品はビルバオを含むビスカヤ県各地の教会や修道院から集められた実物である。これらは実際に礼拝で使用されていた祭壇画や彫刻であり、地域の信仰の歴史を裏付ける物理的な証拠として保存されている。特にルネサンス期やバロック期の作品は保存状態が良く、当時の職人技術や素材の変遷を確認できる学術的価値の高いものが多い。

建物内には、16世紀当時のまま残るゴシック様式の回廊や、繊細な装飾が施された礼拝堂がある。厚い石壁や高い天井がもたらす静かな環境の中で、キリスト教美術の変遷と、石造建築の構造美を整理された形で同時に観察できる。ビルバオの都市形成における宗教の役割を、具体的な造形物を通して客観的に学べる施設である。

















