
トラベルライター、WEBクリエイター。主にヨーロッパで海外ノマドしています。
自分の忘備録、旅のしおり感覚で綴ります。

オビエドからバスで30〜40分のヒホン(Gijón)はアストゥリアス州最大の都市だが、スペインでの知名度はそれほど高くない。バグパイプが街を練り歩く文化があり、1.5kmの都市ビーチがあり、500トンのコンクリート彫刻がある。鉄道博物館には3,000点以上の車両が並び、バスターミナルの時刻表は機能していない。
オビエドからALSAバスで30〜40分。時刻表は飾りで、乗り場は自力で探す
ALSA(Automóviles Luarca S.A.)はスペイン最大の長距離・地域間バス会社で、ナショナル・エクスプレスの傘下にある。オビエド〜ヒホン間は本数が多く、チケットは自動券売機で購入できる。バスターミナルの時刻表掲示板は一見立派だが情報が更新されていない場合があり、乗り場番号は端から順にバスの行先表示を確認するのが確実な方法になっている。
ALSAバスの自動券売機はスペイン語・英語に対応しており、クレジットカードも使える。窓口は開いているかどうかが時間帯・曜日によって安定しないため、自動券売機を使う前提で動いた方が時間を無駄にしない。車内はシートベルト着用推奨だが徹底されていない。車窓から見えるアストゥリアスの牧草地と山の組み合わせは、スペインのイメージとかなりかけ離れている。

オビエド駅と併設しているバスターミナルの自動券売機でバスチケットを購入。窓口は一応あるが、いつ開いているかは不明。

立派な時刻表はあるが機能していないようだ。皆困惑している。

時刻表が機能しておらず乗り場の番号が分からないので、端から順番にバスをチェック。

灰皿のように黒いゴミ箱。容器、紙と段ボール、有機物、その他のゴミの一台四役。

歴代のALSAバスのパネルが展示されている。

清潔感のある簡易的なシート。

美しい田舎の景色が続くので、寝る暇はない。

9時に到着したが閑散としている。人がいない分、ゆっくり散策できるので嬉しい。
午前9時のヒホン。街はまだ起きていないが、蚤の市だけは稼働していた
スペインの地方都市は午前9〜11時の間が最も閑散とする時間帯で、バルが開き始める前は街全体が動いていないように見える。ヒホンはアストゥリアス州最大の都市(人口約26万人)だが、日曜朝はその規模感に反した静けさがある。人がいない時間帯の方が建物や看板を観察しやすいという副次的なメリットがある。

アストゥリアス州の特産物を扱う店のショーウィンドウ。


アーミーナイフのディスプレイが独特。

ヒホン出身のグラフィックアーティスト、サマンサ・フェルナンデス・アルヴァレス(Samantha Fernández Álvarez) の作品。
ヒホンは、近年ストリートアートに力を入れている都市の一つ。街のあちこちで、建物全体を使ったダイナミックな壁画を目にすることができる。これらの壁画は、街の景観を彩るだけでなく、地元のアーティストを支援し、文化的なメッセージを発信する役割も果たしている。
旧テレフォニカビル(Antiguo Edificio de Telefónica)、現在空きビル、次は化粧品会社になる予定らしい
Telefónica(テレフォニカ)はスペインの国営電話会社として設立され、1997年に完全民営化された。各地の旧テレフォニカビルはその時代の「通信インフラの拠点」として建てられた堅牢な建物が多く、現在は空きビル・マンション・ホテルへの転用が進んでいる。このヒホンのビルが化粧品会社になるという話の真偽は不明だが、外観のレトロな重厚感は化粧品ブランドのイメージとは噛み合っていない。


アンティグオ・エディフィシオ・デ・テレフォニカ「Antiguo Edificio de Telefónica」(旧テレフォニカビル)。化粧品会社になる予定で、現在は空きビルとの噂。


10代向けの無料イベントのフラッグ。

魚屋。

魚屋の本日のおすすめや、セール品が書かれて外壁に貼られている。


チェストのつまみのようだが、5€というのが気になる。実用品ではなくディプレイ品なのだろうか。

近代的な街に、古代の人たちが歩いている。


Parque de Moreda公園のベンチ。



スペイン赤十字社(Cruz Roja Española)の本部ビル。
元々は19世紀の産業家サトゥルニーノ・アルバゴンサレス(Saturnino Alvargonzález)の邸宅として1889年に建てられた。


ナイトクラブのエントランス。

診療内科クリニックの看板。

食器やのショーウィンドウ。レトロなホーロー鍋が並ぶ。

日本では見かけないデザインのティーカップセット。

アストゥリアス州最大規模の蚤の市。木工用かんなとピクルスが共存している
ヒホンの蚤の市(El Rastro de Gijón)は毎週日曜に開催されており、アストゥリアス州でも規模が大きい部類に入る。古道具・衣類・食品・工具・ガラクタが区別なく並んでいる。ピクルス専門の出店が蚤の市に存在するのは珍しくなく、スペインの青空市場では食品と雑貨が同一エリアに混在することへの抵抗感が低い。木工用かんなの相場が分からなくても、売れるかどうかに関係なく並べておくのが蚤の市のスタイル。




木工用かんな。


ピクルス専門ショップ。

1.5kmの都市ビーチ。夏の日曜にバグパイプが鳴り響いていた
Playa de San Lorenzoは弓形の砂浜が特徴の都市ビーチで、旧市街のすぐそばに位置している。夏シーズンは地元のアストゥリアス人・ バカンス客・サーファーが混在し、閑散としていた街中とは別世界の人口密度になる。この日は「アストゥリアスの日(Día de Asturias)」で、ガイタ(バグパイプ)を演奏しながら行進するイベントが行われていた。アストゥリアスとガリシアはケルト系文化の影響を受けた地域で、バグパイプは祭り・葬儀・公式行事を問わず使われる。スコットランドのそれとほぼ同じ楽器だが、ガリシア・アストゥリアスでは独自の演奏スタイルが発展している。
サン・ロレンソ・ビーチは旗制度(赤旗・黄旗・緑旗)で遊泳の安全度を示しており、ライフセーバーが常駐している。サーフィン・カヤック・ウィンドサーフィンの用具レンタルは複数店舗が海岸沿いに並んでいる。スペイン版「海の家」は日本のそれより簡易的で、テントと簡単な調理設備があればよいという割り切った作り。ビールとシードル(アストゥリアスの特産)が中心メニュー。

街中は先ほどまで閑散としていたのに、絶叫に近いはしゃぐ声が聞こえてきた。

1.5 km にわたる広い都市ビーチ!夏だし、夏休みだし、天気はいいし、日曜だし。

ビーチグッズショップもカラフルで賑やか。

サーフィンセット貸し出しのお店もある。まるで湘南。

ヒホンではバグパイプを演奏しながら通りを練り歩くイベントが定期的に開催されている。アストゥリアス州はケルト文化の影響を強く受けており、バグパイプは地域の重要な伝統楽器。
この日は「アストゥリアスの日(Día de Asturias)」というアストゥリアス文化と伝統を祝うイベントが行われていた。




子供向けギフトショップ。


スペイン版『海の家』。簡易的な飲食店が多数海岸沿いにあり、気軽に飲食を楽しむことができる。
岬の先端に500トンのコンクリート彫刻がある。中に入ると風と波の音が共鳴する設計になっている
Cerro de Santa Catalinaはシマデビージャ地区(旧市街)の北端にある岬で、1世紀のローマ時代から軍事拠点として使われてきた歴史がある。1982年に市が取得し、1997年に公園として整備された。岬の頂上に設置されているEduardo Chillida(エドゥアルド・チリーダ)の彫刻「Elogio del horizonte(地平線への賛歌)」は高さ10m・重量500トン。チリーダはスペイン・バスク出身の彫刻家で、20世紀の抽象彫刻の代表的作家のひとり。彫刻の内部に立つと海側からの風と波の音が構造体に共鳴して聞こえる仕組みになっているが、この効果は風向きと波の状態によって変わる。

サンタ・カタリナの丘(Cerro de Santa Catalina)は、スペイン北部の都市ヒホン(Gijón)の歴史地区であるシマデビージャ地区(Cimadevilla)の最北端に位置する岬。
1世紀頃からローマ時代の要塞として利用され、その後も街を海からの攻撃から守る軍事拠点だった。1982年にヒホン市が土地を購入し、1997年に建築家のフランシスコ・ポルによって公園として整備された。
公園はヒホン市とカンタブリア海を見下ろすことができる絶景の場所。丘には有名なコンクリート彫刻や、かつての要塞や砲台の跡も残っている。

スペインの彫刻家エドゥアルド・チリーダによって制作された巨大なコンクリート彫刻「Elogio del horizonte(エロヒオ・デル・オリソンテ)」。
高さ10メートル、重さ500トンにも及ぶ巨大なコンクリート製で、海に向かって開かれたような独特の形をしており、大西洋の水平線と一体となるように設計されている。
彫刻の中に入ると、風の音や波の音が共鳴して聞こえるように設計されており、視覚だけでなく聴覚でも楽しめる作品となっている。
2000年近く現役の泉。ローマ浴場に給水していたとされるが、今は飲めるかどうか不明
Fonte La Fonticaはヒホン市内で最も古い泉で、紀元1世紀のローマ時代の湧水地に由来する。近くにあるCampo Valdés(ローマ浴場遺跡)への給水源だったとする説がある。現在は観光・歴史的価値として保護されているが、飲用可能かどうかの表示は明示されていない場合があるため、飲料目的での利用は確認が必要。ローマ浴場遺跡(Campo Valdés)はヒホン旧市街の地下から発掘されたもので、一部は博物館として公開されている。


Fonte La Fontica はヒホン市内で現存する最も古い泉。紀元1世紀頃のローマ時代にさかのぼる天然の湧水が確認されており、Campo Valdés(ローマ浴場)などへ給水していた可能性がある。

サンタ・カタリナの丘へ続く道は、アストゥリアス州で産出される大理石を使用している。複数の採石場から採れた石を使用していること、そして石に含まれる鉱物や不純物の違いによって生じる自然な色合いを出している。
1874年建設の駅舎を使った鉄道博物館。3,000点以上の車両が並んでいて、鉄道に興味がなくても時間が潰れる
Museo del Ferrocarril de Asturias(アストゥリアス鉄道博物館)は旧北部駅(Estación del Norte/1874年建設)の敷地を活用した鉄道専門博物館。スペイン国内でも規模が大きい鉄道博物館のひとつで、蒸気機関車・ディーゼル機関車・路面電車・客車・貨車・制服・備品類まで約3,000点を収蔵している。アストゥリアスは19〜20世紀にかけて石炭産業で栄えた地域で、鉄道はその産業インフラとして発展した。コレクションにはアストゥリアスの鉱山鉄道に特化した車両も含まれており、一般的な国鉄系の展示とは異なる系統の車両が見られる。入場料は大人約3〜5ユーロ程度と安価。

かつての北部駅(Estación del Norte)の敷地を利用しており、スペインでも有数の重要な鉄道車両コレクションを誇っている。
歴史ある駅舎(1874年建設)と新設の展示館、屋外の展示線路から構成されており、スペイン各地の歴史的な機関車や客車、貨車が3,000点以上を展示。

路面電車。

蒸気機関車。

鉄道員の帽子。

鉄道のランプ・照明。

製造銘板。




蒸気機関車。

ディーゼル機関車。

スペイン北部ヒホンは、こじんまりとして観光しやすい街だ。1日あれば十分に楽しめる。美しいビーチや活気あるフリーマーケットでは、地元の人々の休日の過ごし方を感じることができた。落ち着いた雰囲気が心地よく、心に残る旅となった。

まとめ
ヒホンは観光地化の度合いがオビエドより低く、スペイン北部を訪れる日本人旅行者にほぼ素通りされている都市。しかし500トンの彫刻・2000年前の泉・3,000点の鉄道コレクション・バグパイプの行進・アストゥリアス州最大の蚤の市という組み合わせは、1日で消化するにはやや惜しい。オビエドを拠点にした日帰りで十分対応できるが、ビーチシーズン(7〜8月)に訪れると街中の閑散ぶりとビーチの混雑ぶりの落差が大きく、移動するだけで別の街に来たような感覚がある。時刻表が機能していないバスターミナルは帰路でも同様なので、念のため帰りのバスの乗り場確認は余裕をもって行うことを推奨する。











