濡れた石畳に街路灯の光が反射し、古都の風情を一層引き立てる。
そんなしっとりとした雨が絵になる通りを、傘をさしながらアバストス市場へ歩いていく。

サンティアゴ・デ・コンポステーラのアバストス市場へ行ってみた

ガリシア地方の食材が並ぶアバストス市場(Mercado de Abastos)は、大聖堂に次いで2番目に観光客が多いと言われている。1873年に開業し、現在でも地元民や観光客に親しまれている。
観光客はまばらだが、見ているだけでも楽しく、購入した食材を調理してくれるレストランやバーもあるため、地元の食文化を堪能するにはぴったりの場所だ。

アバストス市場を象徴する時計塔。1941年に再建された。
ガリシア地方の代表的な食材
- 魚介類: リアス式海岸に恵まれたガリシア地方は、新鮮な魚介類の宝庫。市場では、タコ、イカ、貝類、カニ、アカザエビ、アンコウ、サメなど、多種多様な海の幸が並ぶ。特に「ペルセベス(カメノテ)」は、この地方ならではの珍味として有名。
- 肉類: ガリシア産の高品質な牛肉をはじめ、豚肉、鶏肉、自家製のチョリソやハムなども豊富にある。
- チーズ: ガリシアは乳製品の生産も盛んで、特に「テティージャ(Tetilla)」や「アルスーア・ウジョア(Arzúa-Ulloa)」といった地元産のチーズも有名。
- 野菜・果物: 新鮮で色とりどりの野菜や果物が並ぶ。「パドロン・ペッパー(Pimientos de Padrón)」は、炒めて塩を振って食べるガリシアの代表的な一品。
- ワイン・リキュール: アルバリーニョ(Albariño)など、地元産の白ワインや、ブドウの搾りかすから造られる蒸留酒「オルホ(Orujo)」も見つけることができる。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの自然史博物館へ行ってみた
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学自然史博物館(Museo de Historia Natural da Universidade de Santiago de Compostela)は、学術的価値と市民への開かれた姿勢を併せ持つ施設として、地域に根差した独自の魅力を放っている。その始まりは1840年、大学教育の一環として設けられた「自然史キャビネット」に遡り、1906年に正式に博物館として発展した。2014年には現在のVista Alegre公園内に移転し、研究・教育・普及を柱とする現代的な博物館へと生まれ変わっている。
展示内容は、動物学・植物学・地質学を中心に幅広く、特に貝類をはじめとする無脊椎動物のタイプ標本を多数所蔵している点はスペイン国内でも貴重。さらに、ガリシアの自然環境を再現した展示や、実物大の土壌断面模型を用いた「土」の展示室など、訪れる人に生態系の複雑さや多様性を体感させる工夫が随所に見られる。単なる標本の陳列にとどまらず、自然と人間の関わりを深く理解させる構成になっているのが特徴。
建物そのものも大きな魅力の一つで、著名な建築家チェサール・ポルテラによって設計された。木材とガラスを巧みに組み合わせ、周囲の公園と調和するデザインは、自然史博物館にふさわしい「軽やかさ」と「透明感」を演出している。内部は柔らかな光に満ち、展示物の保存と鑑賞の両立が考慮され、将来的な拡張にも対応できる柔軟性を備えている。
このように同館は、過去の教育的役割を継承しつつ、最新の科学知識と展示手法を融合させた場として、訪れる人に自然の奥深さを伝えている。美しい建築空間の中で、ガリシアの生態系や地球の多様性を実感できる体験は、観光客だけでなく地元の人々にとっても学びと発見の宝庫といえるだろう。
まずは自然史博物館のある公園・Parque de Vista Alegre (Finca Simeón)を散策
サンティアゴ・デ・コンポステーラのビスタ・アレグレ公園(Parque de Vista Alegre)は、歴史と現代が融合したユニークな都市公園。18世紀末の修道院の庭園にルーツを持ち、20世紀初頭には銀行家シメオン家の私有地となり、邸宅庭園として整備された。
その後、市に譲渡され、建築家磯崎新とポルテラによる再生計画を経て、2003年に開園。広大な敷地には歴史ある樹木が残り、散策路や広場が整備され、市民の憩いの場となっている。
園内には、ポルテラ設計の自然史博物館や高等音楽学校など、先進的なデザインの文化・学術施設が点在。歴史的建造物と現代建築、豊かな自然が調和するこの公園は、散策や文化探求の場として多くの人々を魅了している。

ゴッホ風のプラタナスの幹。


「Casa Europa」(カサ・デ・エウロパ)。1903年に建てられた、カリブ海の影響を受けた折衷様式の建築物。1999年に建築家セサル・ポルテラによって修復され、現代的な建物へと生まれ変わる。
現在は大学の施設。
歴史的森の中に突如現れる近代的な建物。こちらが自然史博物館・USC ~ Museo de Historia Natural


入ってすぐのオブジェ。キリストの両腕にコウノトリ。

きのこコーナー。



蝶々コーナー。

鳥の巣コーナー。

50cmくらいあるタマムシ風オブジェ。

1mくらいあるスズメバチ風オブジェ。

天井には亀たち。

アフリカクロトキの標本。

鉱物コーナー。

栗きんとんのようなサルファー(硫黄) 。

茶葉のようなトルマリン。

卵の化石感ハンパないセプタリア。

階段には手すりが無くてもいいと思わせた。


展示物が地味な分、ディスプレイを凝らしている。

トイレのレバーハンドル。縦型はありそうでないタイプ。
本日の寄り道

日本の巡礼路である熊野古道や西国三十三所との連携を紹介するコーナーが設けられている場合があります。
これは、サンティアゴ巡礼路と日本の巡礼路が、世界の二つの主要な巡礼路として相互に協力・プロモーションを行っているため。特に、和歌山県の田辺市はサンティアゴ・デ・コンポステーラ市と観光協定を結んでおり、両方の巡礼路を歩いた人向けの特典もある。

書店にディスプレイされているトートバッグ。

旧市街以外は大体森。