地域情報:パンプローナ -Pamplona(スペイン)

紀元前7世紀から続く歴史を持つ『パンプローナ』は、ユネスコの世界遺産

パンプローナは、紀元前7世紀から続く歴史を持つ街です。中世の街並みが残る旧市街は、ユネスコの世界遺産に登録されています。旧市街には、サン・セルニーン大聖堂、ナバラ宮殿、市庁舎などの歴史的な建造物が数多く残されています。
スペイン北東部ナバラ自治州の州都です。ピレネー山脈の麓に位置し、エブロ川が流れています。

パンプローナの安全・気候・インフラ

治安 スペイン全体の中でも比較的良いとされています。ただし、観光客の多い旧市街や主要な広場(カスティーリョ広場など)、特に「サン・フェルミン祭」期間中は、スリや置き引きに十分な注意が必要です。夜間の人通りの少ない場所の一人歩きは控えましょう。
時差 日本より-8時間です(日本が午前10時の場合、サンセバスチャンは午前2時)。サマータイム期間(3月最終日曜〜10月最終日曜)は-7時間になります。
年間の気候 西岸海洋性気候に属し、スペイン内陸部としては比較的穏やかです。夏は温暖で乾燥し、冬は冷え込みます。年間を通して降水量はありますが、冬場に多い傾向がありま
平均気温と降水量 夏(7~8月):平均最高気温は**25℃~28℃程度、最低気温は14℃~16℃程度。降水量は少なめです。冬(12~2月):平均最高気温は8℃~10℃程度、最低気温は2℃~4℃**程度。雪が降ることもあります。
電圧とコンセント形状 電圧:230V、周波数:50Hz。コンセント形状:CタイプまたはSEタイプが多いです。

パンプローナの服装と文化・マナー

服装 春・秋:薄手の長袖にジャケットやカーディガンなど脱ぎ着しやすいもの。夏:日中は半袖で十分ですが、朝晩や冷房対策に薄手の上着があると良いです。冬:厚手のコートやダウンジャケット、マフラー、手袋など防寒対策を。全体的に、旧市街の石畳を歩くため、歩きやすい靴が必須です。
マナー 食事の際、音を立てるのは控えましょう。教会や寺院では、露出の多い服装(タンクトップやショートパンツなど)は避け、静かに見学しましょう。スペインでは挨拶や感謝の言葉を伝えることが重要です。
公用語と簡単な挨拶 公用語:スペイン語(カステリャーノ)。ナバラ州ではバスク語も公用語の一つですが、パンプローナでは主にスペイン語が使われます。簡単な挨拶: – こんにちは: Hola(オラ) – ありがとう: Gracias(グラシアス) – すみません/ごめんなさい: Perdón(ペルドン)
宗教や文化的なタブー 宗教は主にカトリックです。キリスト教関連の施設や習慣、聖人、聖母マリアを冒涜するような行為や言動は厳に慎みましょう。サン・フェルミン祭の時期には、牛追いコースに勝手に入ったり、祭りの進行を妨げるような行動は絶対にしてはいけません。
祝祭日と営業時間 祝祭日:カトリックの祝日(セマナ・サンタ、クリスマスなど)や全国的な祝日は休業する店が多いです。また、毎年7月6日~14日のサン・フェルミン祭期間中は街全体がお祭りムードになり、一部店舗は休業したり営業時間が大幅に変わったりします。営業時間:多くの店舗はシエスタ(昼休み)を取ります(14時~17時頃)。観光客向けの店や大型スーパーは通し営業の場合もあります。バルやレストランの夕食時間は20時以降と遅めです。

パンプローナのお金と通信・交通

現地通貨の両替 通貨はユーロ(€)です。日本国内で両替していくのが最もレートが良いことが多いです。現地では空港や主要駅、市内の両替所、銀行などで両替可能ですが、レートは国内より悪い場合があります。ATMでのキャッシングも一般的です。
チップの習慣 チップは義務ではありません。
キャッシュレス決済 クレジットカード(Visa、Mastercardなど)やデビットカードが広く普及しており、ほとんどの店舗やレストラン、スーパーで利用可能です。少額の支払いや露店、小さなバルでは現金が必要な場合もあるため、少額のユーロは用意しておきましょう。
Wi-Fi 旧市街のカフェやバル、ホテルでは無料Wi-Fi**が利用できる場所が多いです。街中には無料の公衆Wi-Fiスポットは少ないため、常時接続が必要な場合は、レンタルWi-Fiルーターや海外ローミング、現地SIMの利用を検討しましょう。
主要な交通手段 市内バス:主要な移動手段です。徒歩:旧市街は徒歩で十分に回れます。タクシー:観光客でも利用しやすいです。長距離移動には鉄道(RENFE)や長距離バスがあります。

パンプローナの旅のアドバイス

サン・フェルミン祭の時期の注意:毎年7月の祭り期間中は、街中が非常に混雑し、ホテルや航空券の予約が困難になります。治安も悪化し、料金も高騰します。祭りを見学する場合は、早めの手配とスリへの厳重な警戒が必要です。

歩きやすい靴を選ぶ:旧市街の路面は石畳が多く、ヒールや底の薄い靴では疲れたり、足を痛めたりしやすいです。スニーカーなどの歩き慣れた靴を用意しましょう。

シエスタに注意:店舗やサービス業では昼の長い休憩(シエスタ)を取る場所が多いです。買い物の予定などは、午前中か17時以降に計画するとスムーズです。

バル文化を楽しむ:パンプローナは美食の街でもあります。カウンターに並ぶ色鮮やかなピンチョスを指差しで注文し、ワインやビールと一緒に楽しむバル巡り(タペオ)は、この街の醍醐味です。

水分補給:夏場は日差しが強く乾燥します。こまめな水分補給(ミネラルウォーター推奨)と紫外線対策(帽子、サングラス、日焼け止め)を忘れずに。

巡礼路の一部であることを意識:パンプローナは「サンティアゴ巡礼の道」の重要な経由地です。巡礼者(カミーノを歩く人々)を見かけたら、敬意をもって接しましょう。

パンプローナ -Pamplona(スペイン)巡礼路の一部であることを意識

パンプローナの観光スポットの特徴

パンプローナの主な観光スポットは、多くが旧市街に集中しており、歴史と文化を色濃く反映しています。

カスティーリョ広場 (Plaza del Castillo)

旧市街の中心にある長方形の美しい広場。街の心臓部であり、市民の憩いの場です。カフェやバルが広場を囲み、特に歴史ある「カフェ・イルーニャ」は文豪ヘミングウェイも訪れたことで有名です。ここから街の雰囲気を掴み、散策を始めましょう。

パンプローナ大聖堂 (Catedral de Pamplona)

ゴシック様式と新古典主義様式が混在する壮麗な大聖堂。特に内部の静謐な空間と、回廊の美しさは見どころです。サンティアゴ巡礼の道の一部としても重要な場所です。

パンプローナ市庁舎 (Ayuntamiento de Pamplona)

美しいファサード(正面)を持つ市庁舎。ゴシック、ルネサンス、バロックの様式が混在しています。特にサン・フェルミン祭の初日、ここから祭り開始を告げる「チュピナソ」が打ち上げられることで世界的に有名です。

パンプローナ -Pamplona(スペイン)パンプローナ市庁舎 (Ayuntamiento de Pamplona)

闘牛場 (Plaza de Toros)

スペインでも有数の一級闘牛場。サン・フェルミン祭のクライマックスである闘牛が行われる場所であり、牛追いの終着点でもあります。建物の外には、この街を愛したヘミングウェイの胸像が立っています。祭り期間外は内部見学が可能な場合があります。

城壁と城塞公園 (Murallas y Ciudadela de Pamplona)

パンプローナを囲んでいた中世の強固な城壁の一部が残り、緑豊かな公園として整備されています。散策路としても最適で、特に城塞公園は旧市街の南に位置する星形の要塞跡で、市民の憩いの場であり、歴史を感じられる場所です。

エスタフェタ通り (Calle Estafeta)

サン・フェルミン祭の牛追い(エンシエロ)のメインストリートとして最も有名な通りです。普段はバルやショップが軒を連ねる賑やかな通りで、祭りの時期でなくてもその歴史的なコースを歩くことができます。

パンプローナの軌跡

ローマの植民都市からナバラ王国の首都へ

パンプローナの特徴

パンプローナ(Pamplona、バスク語でIruña)の起源は古く、紀元前75年に遡ります。ローマの将軍ナエウス・ポンペイウス・マグヌスによって、既存のバスク系民族の集落の近くに「ポンペイオポリス」(Pompaeopolis)として建設されたのが始まりとされます。この名称が現在のパンプローナの語源となりました。

ローマ帝国衰退後、パンプローナは西ゴート族やフランク族といったゲルマン民族の支配下に置かれますが、地理的にピレネー山脈の交通の要衝に位置していたため、常に戦略的な価値を持ち続けました。8世紀にはイベリア半島を席巻したイスラム勢力(ウマイヤ朝)の北進に対する防衛拠点としての役割を果たし、キリスト教勢力とイスラム勢力の勢力圏がぶつかり合う最前線となりました。

特に重要なのは、10世紀に成立したナバラ王国の首都となったことです。パンプローナはナバラ王国の政治・宗教の中心地として発展し、中世スペイン史において独自の地位を確立しました。

「サンティアゴ巡礼の道」と都市の発展

中世のパンプローナの発展を決定づけたのが、キリスト教の三大巡礼地の一つであるサンティアゴ・デ・コンポステーラへと向かう「サンティアゴ巡礼の道」(Camino de Santiago)の存在です。パンプローナはフランス側の巡礼路(カミーノ・フランセス)がピレネー山脈を越えて最初に到達する主要都市の一つであり、その玄関口としての役割を担いました。

巡礼路沿いには、巡礼者を保護するための教会や修道院、病院が次々と建設されました。大聖堂やサン・セルニン教会などのゴシック建築群は、この時代の巡礼による経済的・文化的恩恵を今に伝えています。

パンプローナ -Pamplona(スペイン)「サンティアゴ巡礼の道」と都市の発展

しかし、中世のパンプローナは、元々あったナバラ人が住む集落と、フランスから移住してきた人々が住む集落など、三つの異なる自治区に分かれており、それぞれが独自の法律を持ち、対立が絶えませんでした。この対立は都市の安定を妨げましたが、1423年、ナバラ王カルロス3世による「プニェータの特権」発布により、三つの区が統合され、統一された一つの都市として再出発しました。現在も残る市庁舎の豪華なファサードは、この都市統合の象徴として中央に築かれました。

要塞都市としての変貌と近代のヘミングウェイ

16世紀初頭、ナバラ王国はカスティーリャ王国(後のスペイン王国)に併合され、パンプローナはその辺境都市となります。フランスとの国境に近いという立地から、パンプローナはスペイン国王によって強固な軍事要塞として整備されました。

特に、イタリアのルネサンス期に発展した築城術を取り入れた星形のシウダデラ(城塞) は、当時のヨーロッパで最先端の防御システムを備えていました。現在、市民の憩いの場となっている「城塞公園」は、この歴史的な軍事施設の遺構です。この要塞化の結果、パンプローナはスペイン・フランス間の紛争において重要な役割を果たし続けました。

近代に入り、パンプローナの知名度を世界的に高めたのが、アメリカの小説家アーネスト・ヘミングウェイです。彼は1920年代にパンプローナを何度も訪れ、毎年7月に行われるサン・フェルミン祭と牛追い(エンシエロ)の熱狂的な様子を小説『日はまた昇る』(The Sun Also Rises)に描写しました。この小説は世界的なベストセラーとなり、パンプローナを一躍「牛追い祭りの街」として知らしめ、現代の観光都市としてのアイデンティティを確立する決定打となりました。

パンプローナ -Pamplona(スペイン)要塞都市としての変貌と近代のヘミングウェイ

現代のパンプローナは産業と生活水準が融合した街

歴史的な面影を残すパンプローナは、現代において、北スペインの重要な拠点都市として発展しています。かつての軍事都市から転換し、現在は工業とサービス業が主体の経済を持っています。

特に基幹産業は自動車産業で、フォルクスワーゲン(VW)の工場とその関連企業が地域経済を牽引しています。また、州都として、ナバラ大学や付属病院といった教育・医療機関が充実しており、高水準のサービス業の中心地でもあります。

都市の環境面では、「住みやすい街」として定評があり、高い生活水準と治安の良さが特徴です。かつての要塞はシウダデラ公園などの広大な緑地として市民に開放され、「街の緑の肺」となっています。人々は控えめながら親切な気質で、街は清潔に保たれています。

さらに、パンプローナは日本の山口県と姉妹都市であり、市内の山口公園や山口図書館は、この深い交流のシンボルとなっています。歴史遺産と現代的な機能、そして豊かな自然が調和した、文化的に成熟した都市です。

パンプローナ -Pamplona(スペイン)現代のパンプローナは産業と生活水準が融合した街

パンプローナの名産品

パンプローナが州都であるナバラ州は「スペインの菜園」とも呼ばれ、高品質な野菜や果物、そしてそれらを加工した食品が有名です。

  • ピンチョス(Pincho):パンプローナを含むバスク地方とナバラ州の代表的なバル料理。パンの上に様々な具材を乗せたり、串で刺したりした一口サイズの料理で、種類が豊富です。
  • チストラ(Chistorra):ナバラ州発祥の細長いソーセージ。ベーコンや牛肉、豚肉などをパプリカで色付けしたもので、焼いてバルで提供されます。
  • アスパラガス(Espárrago de Navarra):ナバラ産のホワイトアスパラガスは、太くて柔らかく、甘みが強いことで知られ、スペイン国内外で高級品として扱われます。缶詰や瓶詰も人気です。
  • ピキージョ・ピーマン(Pimiento del Piquillo):形が細長く、甘みがあり、少しスモーキーな風味が特徴のピーマン。軽く火で炙って皮をむき、オリーブオイル漬けや肉詰めにして食べられます。
  • パチャラン(Pacharán):ナバラ州伝統のリキュール。野生のスモモ(エンブリオ)をアニス酒に漬け込んで作られ、食後酒として飲まれます。赤みがかった色が特徴です。
  • ナバラ・ワイン(Vino de Navarra):ナバラ州はワインの産地としても知られ、特にロゼ(ロサド)やテンプラニーリョ種の赤ワインが有名です。
  • 7月7日(Siete de Julio)キャンディ:サン・フェルミン祭にちなんで名付けられた、コーヒー牛乳味のキャンディで、パンプローナの定番土産です。
パンプローナ -Pamplona(スペイン)名産品

パンプローナの年中行事

1月
  • 三賢者の行列(Cabalgata de los Reyes Magos):1月5日の夜に開催。東方の三賢人が山車に乗って登場し、子どもたちに贈り物を届けます。キリスト教の「公現祭」に合わせた祝祭です。
  • 2月
  • カーニバル(Carnaval):移動祝日で日程は変動しますが、パレードや仮装などが行われ、街全体が賑わいます。
  • 3月/4月
  • セマナ・サンタ(聖週間):スペイン全土で行われるカトリックの重要な行事です。厳粛な雰囲気の中、伝統的な衣装をまとった人々が、精巧な装飾が施された山車と共に街を練り歩く宗教的な行列が見られます。
  • 6月
  • 聖ヨハネの火祭り(Hogueras de San Juan):6月23日の夜に行われる火祭り。夏の始まりを祝うもので、各地で焚き火が焚かれます。
  • 7月
  • サン・フェルミン祭(Fiestas de San Fermín):毎年7月6日~14日。パンプローナ最大の世界的にも有名な祭り。初日の市庁舎からの「チュピナソ」(ロケット花火)で始まり、毎朝の「エンシエロ」(牛追い)や闘牛、パレード、コンサートなど、街全体が熱狂に包まれます。
  • 9月
  • ナバラ・デー(Día de Navarra):9月8日にナバラの守護聖人を祝う行事が開催されることがあります。
  • 12月
  • クリスマス(Navidad):クリスマスのイルミネーションや飾りつけで街が彩られます。祝日のため、多くの店は休業します。
  • パンプローナのお得な観光客向けカード「Pamplona Iruña Card(パンプローナ・イルーニャ・カード)」

    パンプローナには、観光客向けの割引やサービスをまとめた公式のカードがあり、それが「Pamplona Iruña Card(パンプローナ・イルーニャ・カード)」です。

    このカードは、パンプローナ市が提供している観光客向けのサービスであり、観光の効率化と費用の節約に役立ちます。主なメリットとして、市内バスの乗車賃が割引になるため、パンプローナの主要な移動手段をお得に利用できます。また、パンプローナ大聖堂や一部の博物館、展示施設といった観光施設の入場料が割引、あるいは無料になる優待を受けられる場合もあります。さらに、提携しているショップ、レストラン、バル、ホテルなどでも特典や割引サービスを受けられることが期待できます。

    このカードは通常、購入日から7日間有効であり、必要に応じて更新も可能です。また、カードは記名式で本人のみ利用可能となっており、12歳以上であれば誰でも申し込むことができます。カードはパンプローナ市内の主要な観光案内所などで入手・購入が可能です。

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