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全長約7kmにも及ぶ砂浜は、夏になると多くの観光客で賑わう『サンタンデール』。
スペイン北部、カンタブリア州の州都であるサンタンデールは、約17万人の人口を擁する海辺の都市。広々とした美しいビーチや歴史的な建造物が特徴で、富裕層の別荘地として知られている。
19世紀から20世紀初頭にかけて、スペイン王室や貴族が夏の避暑地としてサンタンデールを愛用た歴史から、サンタンデールは優雅で格式高いリゾート地として発展し、現在も美しい海岸線と上品な建築物が残る街として人気がある。
現代においては、富裕層の別荘地としての側面もあるが、それだけでなく、美しいビーチや歴史的な街並み、モダンなアートセンター(セントロ・ボティン)など、多様な魅力を持つ観光地として多くの人々を惹きつけている。
サンタンデールの安全・気候・インフラ
治安 | スペインの中でも比較的治安の良い都市として知られています。ただし、観光客を狙ったスリなどの軽犯罪は発生するため、人混みでの手荷物の管理や深夜の一人歩きを避けるなどの基本的な防犯対策は必要です。 |
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水道水の飲用可否 | スペインでは一般的に水道水は飲用可能であり、サンタンデールでも安全に飲むことができます。ただし、水質の違いから味に敏感な方はミネラルウォーターを選ぶと安心です。 |
時差 | 日本より-8時間です(日本が午前10時の場合、サンタンデールは午前2時)。サマータイム期間(3月最終日曜〜10月最終日曜)は-7時間になります。 |
年間の気候 | 大西洋岸気候(海洋性気候)に属し、夏は比較的穏やかで乾燥していますが、秋から春にかけては雨が多く、天気が不安定なのが特徴です。 |
平均気温と降水量 | 夏(6〜9月)は日中30℃前後まで上がることもありますが、平均気温は20〜25℃程度で湿度は低めです。冬(12〜2月)は温暖ですが、朝晩は冷え込み、氷点下になることもあります。雨具は季節を問わず持っていくことをおすすめします。 |
電圧とコンセント形状 | 電圧は230V、周波数は50Hzです。コンセント形状はヨーロッパで一般的なCタイプまたはSEタイプが主流です。日本の電化製品を使う場合は、変換プラグと、必要に応じて変圧器が必要です。 |
サンタンデールの服装と文化・マナー
服装 | 基本的に東京と同じ季節の服装で問題ありませんが、朝晩の気温差が大きいため、季節を問わず薄手のジャケットやカーディガンなど、脱ぎ着できる羽織りものを必ず持参してください。地元民は上品なカジュアルな服装を好む傾向があります。 |
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服装に関するマナー | 教会や宗教施設に入場する際は、ノースリーブやショートパンツなど肌の露出が多い服装は避けましょう(入場を断られる場合があります)。膝丈程度のボトムスやスカートが無難です。高級レストランではスマートカジュアルが好まれます。 |
公用語と簡単な挨拶 | 公用語はスペイン語(カスティーリャ語)です。簡単な挨拶を覚えておくとコミュニケーションが円滑になります。 ・こんにちは:Hola(オラ) ・ありがとう:Gracias(グラシアス) ・お願いします:Por favor(ポル・ファボール) |
宗教や文化的なタブー | スペインの主要な宗教はカトリックです。宗教施設では静粛に。また、スペインの食事時間は夜が遅い(夕食は20時以降)のが一般的です。午後のシエスタ(昼休憩)の時間帯(14時〜17時頃)は、一部の商店が閉まることがあります。 |
祝祭日と営業時間 | 祝日(国民の祝日やサンタンデール独自の祝日)には、銀行や役所、多くの商店が休業します。一般的な営業時間は、朝〜14時頃まで開店し、シエスタを挟んで17時頃〜夜まで再開するパターンが多いです。観光地のレストランや大型店は通し営業していることもあります。 |
サンタンデールのお金と通信・交通
現地通貨の両替 | 通貨はユーロ(€)です。日本国内で主要な額を両替していくのが一般的ですが、現地空港や銀行、市内にあるATM(キャッシング)も広く利用されています。 |
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チップの習慣 | チップは義務ではありません。 |
キャッシュレス決済 | クレジットカード(Visa、Mastercard)やデビットカードが広く普及しており、ほとんどの店舗や施設で利用可能です。ただし、個人経営の小さなバルや商店では現金が必要な場合もあるため、少額のユーロ現金は持っておくと安心です。 |
Wi-Fi | ホテルや主要なカフェ、レストラン、空港などで無料Wi-Fiが利用できます。街歩きの際には、レンタルWi-FiやeSIMの利用が便利です。 |
主要な交通手段 | 市内の移動は主にバスが公共交通の中心です。観光地間の移動や荷物が多い場合はタクシーも便利です。近郊都市への移動には国鉄(Renfe)や長距離バスが利用されます。 |
タクシー料金 | 初乗り料金があり、メーター制です。空港や港からの利用には定額制が適用される場合もあります。サンタンデール港から市内中心部までは、約€20〜€24程度が目安です。 |
サンタンデールのグルメ・ショッピング
飲食店 | カンタブリア地方は新鮮な魚介類が有名です。街のバルでは、美食文化の代名詞とも言えるピンチョス(Pinchos)を楽しめます。特に海沿いのエリアには、美味しいシーフードレストランが多く集まっています。 但し、日祝日は営業していないお店が多いので注意が必要です。 場所によっては飲食店の数が極端に少ない場所があります。 |
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スーパー | スペイン全土に展開する大手チェーンのスーパーマーケットとして、Mercadona(メルカドーナ)、Carrefour(カルフール)、Dia(ディア)などがあます。徒歩圏内に必ず1つ以上、大きなスーパーがあると感じられるでしょう。 但し、日祝日は営業していないお店が多いので注意が必要です。 |
カフェ | 市内中心部には、伝統的な雰囲気のカフェからモダンなカフェまで豊富にあります。特に朝食(デサユーノ)や午後の軽食(メリエンダ)の時間帯は賑わいます。エスプレッソ文化が根付いています。 |
買い物環境 | スペインのスーパーは、生鮮食品や惣菜コーナーが充実しており、新鮮な魚介類や地元産のハム、ワインなどを手軽に購入できます。観光客にとっても、地元の食材を調達しやすいという利点があります。 |
サンタンデールの観光スポットの特徴
名所が集中していて観光しやすい(街のコンパクトさ)
徒歩での散策に非常に適したコンパクトな街です。主要な見どころ(歴史地区、セントロ・ボティンなどの現代アートセンター、海沿いのカフェなど)は市街地や湾岸に集中しており、ほとんどのエリアを徒歩で回ることができます。
観光客が多いマドリードやバルセロナなどの大都市と異なり、広大な移動が必要なく、ゆったりとしたペースで観光を楽しめます。都市と自然が融合しているため、街を歩くだけで両方の魅力を感じられます。

交通機関で周る必要が少ないが、魅力的な移動手段がある
名所自体は徒歩圏内にありますが、広範囲にわたる観光スポット(例えば、街のシンボルであるマグダレーナ半島やエル・サルディネーロ海岸)へは、公共交通機関(バス)も便利です。
マグダレーナ半島では、歩き疲れた場合や小さなお子様連れの場合、観光列車(マグダレノス)を利用して半島を巡るユニークな体験ができます。主要な観光地間の移動で交通機関が必須ということはありませんが、バスや自転車サービスも整っています。

スペインの他の地域と比較して自然が多い(緑豊かな海岸線)
スペイン北部のカンタブリア地方に位置し、気候が温暖で雨が多いため、「山の緑とビーチの白い砂浜、海」のコントラストが非常に美しいのが最大の魅力です。
南部(アンダルシア地方など)の乾燥した荒々しい景色や、内陸部(マドリードなど)の平原とは異なり、サンタンデールは緑豊かで、「海のピレネー」**とも呼ばれる雄大な自然が広がります。
リアス式海岸が形成されており、断崖絶壁や広々とした砂浜など変化に富んだ海岸線の眺めは、北スペインならではの魅力です。近郊には、壮大なカバルセノ自然公園などもあり、自然愛好家には特におすすめの場所です。

サンタンデールの軌跡
サンタンデール:海洋貿易と王室が育んだ港都の物語
スペイン北部、カンタブリア海に面したサンタンデールは、その歴史の波を乗りこなし、常に「海」と共に生きてきた都市だ。かつてローマ帝国時代には「ポルトゥス・ビクトリアエ(勝利の港)」と呼ばれたが、その名は時とともに消え、殉教者である聖エメテリオに由来する現在の名前へと変わった。
聖なる秘密と、富を呼ぶ貿易の道
サンタンデールの名の元になった聖エメテリオは、ローマ時代に信仰のために命を落とした人物とされている。この街の教会の地下には、彼の頭部の一部が密かに隠されていたという裏話がある。これは、信仰が弾圧されていた時代に、人々の心の拠り所を守り抜こうとした、当時の市民の強い決意を示している。華々しい「勝利の港」という名前の裏で、人々は静かな祈りを捧げ続けていたのだ。
中世以降、サンタンデールの運命は一変する。海運業の中心地として、この港はヨーロッパ各地を結ぶ重要な結節点となった。特に、18世紀から19世紀にかけては、大西洋貿易の拠点となり、遠くアメリカ大陸からタバコやカカオなどの貴重な品々を輸入することで、巨額の富を生み出した。街に次々と建てられた美しい建物や銀行は、この時代の繁栄の証しである。サンタンデールが、金融や商業の中心地として発展した背景には、このような大胆な海洋ビジネスの成功があった。
国王の避暑地と、街の華麗なる変貌
サンタンデールの地位を決定づけたのは、20世紀初頭に訪れた一組のカップル、スペイン国王アルフォンソ13世とその王妃だ。彼らがこの地を夏の避暑地に選んだことで、サンタンデールは国際的なリゾート地へと変貌を遂げる。
国王のために、海を見晴らす美しい半島に建てられたのが、現在も市のシンボルであるマグダレーナ宮殿だ。この宮殿が完成したことで、ヨーロッパ中の貴族や富裕層がサンタンデールに集まるようになり、街は一気に洗練された雰囲気に包まれた。この「王室によるブランド化」は、古い港町に一瞬にして華やかな観光都市という新しいアイデンティティを与えた出来事だったと言えるだろう。

大火災からの再生:不屈のカンタブリア魂
しかし、華やかな歴史の裏には、大きな試練もあった。1941年、港近くから発生した大火災だ。冬の強風「スール」にあおられた炎は、歴史的な街の中心部を一夜にして焼き尽くした。多くの貴重な建物や、何世紀もの時を刻んだ街並みが失われてしまった。
この壊滅的な被害に対し、市民たちは諦めなかった。彼らは力を結集し、燃えてしまった古い区画を、現代的な基準に基づいた機能的で広々とした新しい街並みへと再建したのだ。曲がりくねった古い道は、まっすぐな大通りに変わり、サンタンデールは現代都市としての骨格を手に入れた。この大火災からの復興は、カンタブリア人の不屈の精神、すなわち「カンタブリア魂」の象徴として語り継がれている。
海と富、王室の栄光、そして大火という試練。これら全てが、現在の美しくも力強いサンタンデールの姿を作り上げているのだ。

過去を背負い、海と生きる現代の街
スペイン北部に位置するサンタンデールは、ただ美しい海辺のリゾート地ではない。ここは、激しい歴史の炎を乗り越え、現在は海と金融、そして文化が三位一体となった特別な場所だ。
大火災からの「都市計画」という裏話
1941年の大火災で中心部が燃え尽きたという悲劇的な歴史があるため、街の多くは戦後に再建されたものだ。そのため、古いヨーロッパの街によくある細く曲がりくねった道ではなく、広くてまっすぐな大通りが多い。これは、「火災の後に、現代的な都市計画でやり直した」という、この街の最大の裏話だと言えるだろう。失われた過去の街並みを嘆くよりも、住みやすさを優先した、合理的な選択の結果だ。
王室の面影とビーチの開放感
現在のサンタンデールは、海に突き出た半島にあるマグダレーナ宮殿(かつての王室の避暑地)を中心に、豪華なビーチと緑豊かな公園が広がる。夏には国内外から多くの観光客が訪れ、その優雅な雰囲気は健在だ。ビーチリゾートとしての華やかさは、国王が滞在した時代から受け継がれたこの街の財産だ。

金融の中心地と現代アートの融合
また、ここはただの観光地ではない。スペインでも有数の巨大銀行であるサンタンデール銀行が生まれた地であり、今でもその本社機能の一部が残る、金融の中心地としての顔も持つ。さらに、近年は新しい文化施設、特に海沿いの美しい建築物である「ボティン・センター」が注目を集めている。これは、レンゾ・ピアノが設計した現代アートセンターで、かつて貿易で栄えた港が、今度は現代アートと文化交流の場として生まれ変わったことを象徴している。

サンタンデールは、過去の王室の華やかさと、金融の硬派な力、そして海辺の開放感が混ざり合った、過去と現代が共存する独特な空気を持つ街なのだ。
サンタンデールの名産品
- ラバス (Rabas):イカのフリッター。サンタンデールの定番料理
- ソロポトゥン (Sorropotún): カツオ、ジャガイモ、赤ピーマンのペーストを煮込んだシチュー
- モチェス (Moches): コーンスターチを使ったプリン
- タビアス (Tabaque): チーズケーキの一種
- オヘハス (Orujos): ハーブを使ったリキュール
- ボイ・デ・カンテラ (Boi de Cantabria): 木彫りの牛
- セラミカ・デ・ラ・リオハ (Cerámica de La Rioja): リオハ地方で作られる陶器
- イダルゴ・デ・タラベラ (Hidalgo de Talavera): タラベラ・デ・ラ・レアルで作られる陶器
- アンチョアス・デ・カンタブリア (Anchoas de Cantabria): カンタブリア海で獲れたアンチョビ
- ケソ・デ・ウブレア (Queso de Cabrales): アストゥリアス州で作られるチーズ
- シードル (Sidra):アストゥリアス州で作られるりんご酒
サンタンデールの年中行事
4月または5月頃 | 観戦は無料なので、海辺でレースの迫力を楽しむことができます。 |
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5月 | 観光客の参加: 有料で映画を鑑賞したり、ディスカッションに参加したりすることができます。 |
6月頃 | ボートレース、シーフードフェア、漁業に関する文化的な展示、地元のイベントなどが海岸沿いや港で開催されます。 ほとんどのイベントは無料で観覧可能で、新鮮なシーフードを味わいながら、港町の活気と海との繋がりを感じることができます。 |
7月下旬〜8月上旬 | 市内の至る所でコンサート、ストリートパーティー、文化的な催し、闘牛などが1週間にわたって繰り広げられます。街全体がお祭りムードとなり、観光客も地元の賑やかな雰囲気に参加して楽しむことができます。 無料のストリートイベントやコンサートが多数開催されるため、誰でも気軽に活気に満ちたお祭りの雰囲気を楽しめます。 |
8月 | 世界中から著名な指揮者、オーケストラ、アーティストが集まり、クラシック音楽、ダンス、オペラなどが上演されます。 有料のイベントですが、芸術愛好家にとってはサンタンデール訪問のハイライトとなります。 |