フランスのナルボンヌは、地中海に近いフランス南部のオキシタニー地域圏に位置する、歴史と美食が調和した魅力的な街。かつてローマ帝国の属州ガリア・ナルボネンシスの首都として繁栄した「ローマの娘」とも呼ばれるこの街には、当時の面影が今も色濃く残っている。
バルセロナから電車で約2時間。フランス南部のナルボンヌは、かつてローマ帝国の属州首都だった街で、現在は人口6万弱の地方都市。ローマ時代の地下倉庫がそのまま市場の床下に残っており、2000年前の石積みと現代のスーパーが地上と地下で同居している。観光客は少なく、日曜の大市場だけが異常に賑わう。
街の中心部を流れるロビーヌ運河は世界遺産に登録されており、人口は約59,000人、フランスの都市としては中規模。1990年代には4万人台だったが、近年は南フランスへの移住ブームもあり、少しずつ増加している。
Contents
- 1 バルセロナからナルボンヌへ。パスポート不要のはずが、必要な場面もある
- 2 駅は閑散、でも市場の周辺だけ異常に人が多い
- 3 日曜限定・南フランス最大規模の市場、ただし店は300〜500。規模感がわかりにくい
- 4 屋内市場レ・アール(Les Halles de Narbonne Market)に集まる地元の食
- 5 かつて港だったが土砂で埋まり、運河で再起した街
- 6 ペストと財政難で工事が止まり、そのまま700年が過ぎた大聖堂
- 7 市庁舎、美術館、博物館、市議会、まとめて大司教宮殿に詰め込んだナルボンヌ
- 8 市場の真下に、紀元前1世紀の倉庫がそのまま残っている
- 9 2000年分の建築が雑多に並ぶ、ナルボンヌの「混在」する街並み
- 10 猛毒のキョウチクトウが街路樹として普通に植えてある
- 11 ナルボンヌを後にして
- 12 まとめ

トラベルライター、WEBクリエイター。主にヨーロッパで海外ノマドしています。
自分の忘備録、旅のしおり感覚で綴ります。
バルセロナからナルボンヌへ。パスポート不要のはずが、必要な場面もある
バルセロナ・サンツ駅からフランス国鉄(SNCF)やスペイン国鉄(Renfe)が運行する高速列車を利用するのが最も快適な方法。
バルセロナからナルボンヌまでは国境を越えるが、シェンゲン協定圏内なので国境審査は原則なし。ただし駅窓口での切符購入時など、パスポート提示を求められる場面がある。持参は必須。オンライン予約のほうが当日購入より大幅に安い傾向があり、ハイシーズンや週末は満席になることもある。

バルセロナ・サンツ駅からナルボンヌ(Narbonne)駅までの切符を購入する方法
スペインのバルセロナ・サンツ(Barcelona・Sants)駅からフランスのナルボンヌ(Narbonne)駅までの切符を購入する方法は、主に「オンラインでの事前予約」か「駅の窓口・券売機での当日購入」の2通り。
この区間はスペイン国鉄のRenfe(レンフェ)とフランス国鉄のSNCF(フランス国鉄)がそれぞれ高速列車を運行している。
バルセロナからフランスへ向かう高速列車は全席指定制で、特にハイシーズンや週末は満席になることがある。当日駅で購入するよりも、事前にオンラインで予約しておく方が料金も大幅に安くなる傾向にある。
オンラインで購入する
最も確実で安く購入できる方法。通常、乗車日の数ヶ月前から予約が可能。
Renfe公式サイト(スペイン国鉄)
スペイン側の運行会社で、AVE(高速鉄道)のチケットを直接購入できる。

SNCF Connect(フランス国鉄公式サイト)
フランス側の運行会社。TGV・InOui(イヌイ)の予約に適している。

Omio(オミオ)
日本語に対応している、複数の鉄道会社を比較して一括検索できる予約サイト。



駅は閑散、でも市場の周辺だけ異常に人が多い
駅前は静かで店も少ない。徒歩で旧市街に向かうと、屋内市場「レ・アール」の周辺に突然人口が集中している。ナルボンヌの人口分布は偏っている。

駅構内にはL’Agora(ラ・アゴラ)というキオスク・売店があるが、品揃えは限られている。また駅前にもいくつか飲食店はあるが充実した食事を楽しみたい場合は、駅から少し歩いて市街地へ向かうのがおすすめ。





日曜限定・南フランス最大規模の市場、ただし店は300〜500。規模感がわかりにくい
ナルボンヌの日曜日に開催される大市場(グラン・マルシェ)は、南フランスでも最大規模の市場の一つであり、出店数は通常300店舗から500店舗にものぼる。
南フランス最大規模と言われるが、日本の縁日で育った感覚では「思ったより広い」という印象。衣類、バッグ、雑貨、食品が混在し、フリーダ・カーログッズも大量にある。
この市場は、屋内市場である「レ・アール」の周辺から、ロビーヌ運河を挟んだ対岸のミラボー通りまで広範囲にわたってテントが並ぶため、その規模と賑わいは圧倒的。







屋内市場レ・アール(Les Halles de Narbonne Market)に集まる地元の食
約60以上の店が軒を連ね、新鮮な地中海の魚介類、ジビエ、地元のチーズ、ワイン、オリーブなどが所狭しと並んでいる。
2022年にフランスで最も美しい市場に選ばれた屋内市場、実際に来ると納得する
「レ・アール(Les Halles de Narbonne Market)」は、1901年に完成した美しい建築様式を誇る屋内市場で、2022年にはフランスのテレビ番組で「フランスで最も美しい市場」に選ばれたこともある。
外観は、パリの古い中央市場(レ・アール)と同じ「バルタール様式」と呼ばれる、鉄とガラス、レンガを組み合わせた19世紀末の産業建築の粋を集めたデザイン。


かつて港だったが土砂で埋まり、運河で再起した街
ナルボンヌにとってロビーヌ運河は、単なる水路ではなく、街の繁栄を支えてきた歴史的象徴であり、現在は生活と観光の中心となる「心臓部」のような存在。
この運河は17世紀後半にミディ運河と地中海を結ぶ連絡路として整備され、かつてのオード川の旧河道を利用して造られた。全長は約32kmに及び、1996年にはミディ運河の延長線上の資産としてユネスコ世界遺産に登録されている。

古代ローマ時代、ナルボンヌは地中海貿易の拠点だった。しかし堆積物で港が閉塞し海から切り離された。17世紀にミディ運河と接続するロビーヌ運河が整備され、ワイン輸送の拠点として復活。全長約32km。1996年にユネスコ世界遺産登録。現在は観光と市民の憩いの場になっているが、経緯がなかなか波乱含み。
現在の運河は物流の主役から観光と市民の憩いの場へと変貌を遂げている。街の中心部では商人橋と呼ばれる建物一体型の橋が運河を跨ぎ、独特の景観を形成している。

ペストと財政難で工事が止まり、そのまま700年が過ぎた大聖堂
ナルボンヌ大聖堂(Cathédrale Saint-Just et Saint-Pasteur)
ナルボンヌ大聖堂(サン・ジュスト・エ・サン・パストゥール大聖堂/Cathédrale Saint-Just et Saint-Pasteur)は、13世紀に着工されたゴシック様式の建築物。
当初はフランス北部で見られるような巨大な合唱席を持つ野心的な設計がなされていたが、都市の防衛壁との干渉や財政難、さらには14世紀に流行したペストの影響により、建設が途中で断念し、未完成のまま現在に至っている。


市庁舎、美術館、博物館、市議会、まとめて大司教宮殿に詰め込んだナルボンヌ
12〜13世紀建設の大司教宮殿を、現在は市庁舎・美術館・考古学博物館として転用している。広場にはローマ建国神話の牝狼像(カピトリーノの複製)が置いてあり、ローマ帝国の属州首都だった歴史をしれっとアピールしている。

現在はパレ・ミュゼという名称の通り、内部の多くが美術館や考古学博物館として一般に公開されている。展示品には古代ローマ時代の壁画や中世の彫刻、さらには東洋の美術品まで含まれており、ナルボンヌが地中海貿易の重要拠点として栄えた証拠を間近に見ることができる。





ナルボンヌ市庁舎(メリー/Mairie de Narbonne)
ナルボンヌ市庁舎(Mairie・de・Narbonne)は、かつての大司教宮殿を利用した歴史的な建造物となっている。この建物は、中世の要塞としての特徴を残す複数の塔や、ゴシック様式の装飾が施された外壁によって構成されている。現在は行政の拠点として機能しているが、内部には美術館も併設されており、地域の歴史を伝える役割を担っている。
市庁舎広場
ナルボンヌ市庁舎の目の前に広がる市庁舎広場には、紀元前118年頃に建設されたヴィア・ドミティアというローマ街道の遺構が一部露出した状態で保存されている。古代の石畳を直接観察できる。



市場の真下に、紀元前1世紀の倉庫がそのまま残っている
ロマン・グラナリー・ミュージアム(Roman Granary Museum)
ロマン・グラナリー・ミュージアムは、紀元前1世紀頃に建設された地下倉庫の遺構を展示する施設。かつてこの地はローマ帝国の属州ガリア・ナルボネンシスの首都として繁栄した。この博物館の最大の見どころは、地下に広がるホリウムと呼ばれる保存倉庫の跡。




2000年分の建築が雑多に並ぶ、ナルボンヌの「混在」する街並み
ナルボンヌは古代ローマ時代からの歴史を持つが、現在の街並みは中世から19世紀頃の様式が中心となっている。地中海沿岸特有の石造りやレンガ造りの多層階集合住宅が多く、厚い壁や木製のシャッターが特徴。











猛毒のキョウチクトウが街路樹として普通に植えてある
南フランスでは乾燥と大気汚染に強いキョウチクトウが街路樹として一般的。美しいが全草に強い毒性を持つ。誤食すると心臓に影響が出る。そのような植物がカフェのテラス席の横に何本も植わっているのが南仏の日常光景。

ナルボンヌは地中海性気候に属しており、乾燥や暑さに強い植物が街路樹や公園の植栽として選ばれている。これらの植物は景観を美しく保つだけでなく、維持管理のしやすさから都市緑化に活用されている。
特にQuartier Est(カルティエ・エスト / 東地区)は近代的な再開発が行われたエリアであり、景観設計の一環として地中海性の植物が計画的に配されている。






ナルボンヌを後にして
南仏の田舎町を訪れたのは今回が初めてだった。
ゴシック建築や自己主張の強いスペインの建築にしばらく触れていたせいか、ナルボンヌの街並みは驚くほどシンプルに映った。
装飾は控えめだが、ローマ時代にまでさかのぼる長い歴史が随所に感じられ、街の印象を一言で表すなら「狭くて深い」という表現がしっくりくる。
なかでもナルボヴィア博物館(Narbo Via museum)は、展示物の内容だけでなく、その見せ方にも独自性があり、強く印象に残った。
街が最も活気づくのは日曜日に大市場(グラン・マルシェ)が開かれる時間帯だが、その一方でショッピングストリートは多くの店が休業し、全体としては静かな雰囲気になる。観光に適した曜日については、少し判断が難しいと感じた。



まとめ
ナルボンヌは「地味に濃い」街。観光客は少なく、メインストリートの店は日曜に閉まり、駅前は閑散としている。ただし、屋内市場の建築は本物、地下のローマ遺構は本物、大聖堂の未完の壁も本物。「ちゃんと調べてから来た人だけが得をする」タイプの街。訪問するなら日曜が大市場と重なってにぎやかだが、ショッピングストリートは閉まる。この矛盾を受け入れられる人向け。







