モンセラット(Montserrat)に行ってみた

「聖なる鋸山」を意味するモンセラットは、スペインのカタルーニャ地方にある奇岩の山々が連なる聖地。
バルセロナから北西に約50キロメートルの位置にあり、その独特な形状から古来より信仰の対象となってきた。現在ではキリスト教の巡礼地としてだけでなく、その唯一無二の景観を求める世界中の観光客を惹きつける場所となっている。
スペインを訪れるなら、バルセロナのサグラダ・ファミリアと同じくらい価値がある場所だと感じた。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)

モンセラットってどんな場所?「聖なる鋸山」の魅力とは

モンセラットはバルセロナ近郊に位置する奇岩群の山でありカタルーニャを代表する宗教的象徴として知られている。のこぎりの歯のように連なる岩山の中腹には修道院が築かれ巡礼地として長い歴史を持つ。自然景観と信仰空間が不可分に結びついた場所として現在も多くの人が訪れている。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)

バルセロナからモンセラットへのベストなアクセス方法

バルセロナ中心部からモンセラットへ向かう一般的な手段はカタルーニャ鉄道の利用となる。地下鉄各線が集まるスペイン広場駅からFGCのR5号線に乗車し山麓方面へ進む流れとなる。途中で登山鉄道クレマジェラに乗り換えるかロープウェイアエリを選ぶかを事前に決めておく必要がある。前者はモニストロルデモンセラート駅で下車し後者は1駅手前のアエリデモンセラート駅を利用する。バスによる直行手段も存在するが本数は少なく時間管理が重要となる。移動時間は片道で約1.5時間から2時間弱が目安となる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)登山鉄道の車窓から見下ろすモニストロル・デ・モンセラットの町並み。
登山鉄道の車窓から見下ろすモニストロル・デ・モンセラットの町並み。レンガ造りの古い工場跡のような大きな建物が、蛇行する道路に沿って建っている。カタルーニャ地方の伝統的な建築様式と、山あいの斜面を有効活用した土地利用の様子がうかがえる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)駅のホームに設置された鉄道の歩みが記されている解説パネルが並ぶ。
駅のホームに設置された鉄道の歩みが記されている解説パネルが並ぶ。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラット登山鉄道の始発駅であるモニストロル・ド・モンセラット駅のホーム。
モンセラット登山鉄道の始発駅であるモニストロル・ド・モンセラット駅のホーム。停車中の車両にはカタルーニャ中央ユネスコ世界ジオパークのラッピングが施されている。ホーム上の柱には、バルセロナの地下鉄や鉄道で共通して使われるカラーコード化された案内標識が掲げられている。この登山鉄道は勾配を登るためのラック式を採用しており、日本では大井川鐵道のアプト式区間などで見ることができる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)駅構内に設置された案内表示板。
駅構内に設置された案内表示板。下部にはカタルーニャ語でモンセラット登山鉄道の名称と、現代詩人サルバドール・エスプリウの名を冠した通りへの出口が示されている。中央にあるカラフルな正方形のマークは、視覚障害者向けのナビゲーションコード。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラット修道院を中心とした観光拠点の広場。
モンセラット修道院を中心とした観光拠点の広場。背後には「のこぎり山」の語源となった独特な形状の礫岩がそびえ立っている。左手にはサン・ジョアン方面へ向かうフニクラ(ケーブルカー)の乗り場があり、ガラス張りのエレベーター塔が設置されている。垂直に近い岩壁のすぐ下に近代的な宿泊施設や案内所が並ぶ光景は、地質学的にも非常に珍しい。

地形がもたらす景観 標高1,236mの絶景

モンセラットの最高峰であるサン・ジェロニー山の標高は1,236メートルである。観光の拠点となるモンセラット修道院は山の中腹、標高約720メートル地点に位置している。日本の山に例えると、標高の数値だけでいえば、東京都最高峰の雲取山(2,017メートル)よりは低く、高尾山(599メートル)の約2倍の高さということになる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)修道院エリアからサン・コバ(聖洞窟)方面へ続く遊歩道からの眺望。
修道院エリアからサン・コバ(聖洞窟)方面へ続く遊歩道からの眺望。標高約700メートル付近に位置し、丸みを帯びた巨大な岩柱が林立するモンセラット特有のパノラマが広がる。右手には山肌に張り付くように建てられた修道院の宿坊が見える。堆積岩が隆起し、長い年月をかけて侵食されたこの地質構造は、世界的に見ても希少な自然遺産といえる。

モンセラット修道院と黒いマリア像

モンセラットの歴史の中核を成すのは、カタルーニャの守護聖人として崇められる「黒いマリア像(ラ・ムレネータ)」である。この像の起源には、1,000年以上の時を超えて語り継がれる不思議な物語が存在する。

伝承によれば、西暦880年のある土曜日の夕暮れ時、山で羊を飼っていた子供たちが、山の中腹に眩い光が降り注ぎ、どこからともなく美しい旋律が流れてくるのを目撃した。驚いた子供たちが親や村の司祭を連れて再びその場所を訪れると、同様の奇跡が何度も繰り返されたという。司祭らが光の出どころを突き止めようと険しい岩肌を登り、一つの洞窟(現在のサンタ・コバ)に辿り着いたとき、そこには木造のマリア像が安置されていた。

司祭はこの像を麓の町へ運び出そうとしたが、ある地点まで来ると像が急に重くなり、大人数で抱えても一歩も動かすことができなくなった。人々はこれを「マリア様がこの山に留まることを望んでいる」という神の意志として受け入れ、その場所に小さな礼拝堂を建てた。これが現在のモンセラット修道院の始まりとされている。像が黒い理由については、長い年月の間に灯された蝋燭の煤が染み込んだという説や、木材の化学変化によるものという説があるが、その神秘的な佇まいは今も多くの人々の信仰を集めている。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラット修道院の象徴である「黒い聖母像(ラ・モレネタ)」の近影。
モンセラット修道院の象徴である「黒い聖母像(ラ・モレネタ)」の近影。12世紀頃に制作されたと伝えられる木彫像で、幼いイエスを膝に抱いている。表面が黒いのは、長年の蝋燭の煤や塗料の変質によるとされる。

モンセラット修道院(Santa Maria de Montserrat Abbey)

モンセラット修道院はカタルーニャの聖地として知られるベネディクト会の修道院。標高約720メートル地点に位置し、背後にそびえる奇岩群と一体化したような景観が特徴で。ここにはカタルーニャの守護聖人である黒いマリア像が祀られており、世界中から巡礼者が訪れる。また欧州最古の部類に属する少年合唱団エスコラニアの拠点でもあり、その清らかな歌声は大聖堂の独特な岩山の構造と響き合い、訪れる者に深い感銘を与えている。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)修道院の回廊や外壁のアーチ部分に設置された、白い石像。
修道院の回廊や外壁のアーチ部分に設置された、白い石像。背後のアーチ状の梁は、モンセラットで産出される礫岩を積み上げて作られており、荒々しい岩の質感と滑らかな彫刻が対照的。こうした建築と彫刻が融合した光景はヨーロッパの歴史的建造物では一般的。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)大理石のような白い石材に彫られた花のレリーフ。
大理石のような白い石材に彫られた花のレリーフ。こうした石造建築の細部装飾は、カタルーニャ地方の伝統的な職人技術の高さを示すものといえる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラット修道院内部の壁面に描かれたフレスコ画の一部。
モンセラット修道院内部の壁面に描かれたフレスコ画の一部。日本の寺院にある障壁画とは異なる西洋特有の残酷なモチーフ。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)金属板を叩きだして制作されたと思われる聖人のレリーフ。
金属板を叩きだして制作されたと思われる聖人のレリーフ。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)鮮やかな色彩のステンドグラス。
鮮やかな色彩のステンドグラス。19世紀から20世紀にかけて再建された修道院内部を彩る装飾の一つ。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)岩山の斜面を穿って作られた、キャンドルを捧げるための礼拝所。
岩山の斜面を穿って作られた、キャンドルを捧げるための礼拝所。棚には赤や緑の筒に入った献灯用のキャンドルが多数並び、参拝者が火を灯して祈りを捧げる場所となっている。岩壁をそのまま利用したこうした礼拝施設は、山岳信仰の拠点であるモンセラットの地形的特徴をよく表している。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)修道院の通路や礼拝堂に吊るされた、金属製のランプ。
修道院の通路や礼拝堂に吊るされた、金属製のランプ。円環状のフレームには寄進者の名前や日付と思われる文字が刻まれており、中央の黄色いガラスの中で灯火が揺れる構造。

ガウディも魅了した聖地 モンセラットの芸術史

近代に入り、この聖地の景観整備に深く関わったのが、建築家アントニ・ガウディであった。ガウディは1900年から1916年にかけて、マリア像が発見された場所へと続く「サンタ・コバの巡礼路」の整備プロジェクトに携わっている。

彼が担当したのは、キリストの生涯における重要な場面を再現した「栄光の第1の謎(キリストの復活)」という記念碑の設計であった。ガウディはこの地で、自身の代名詞とも言える「自然との調和」を極限まで追求した。彼は、岩山に直接穴を掘り、周囲の岩石をそのまま利用することで、彫刻がまるで山の一部として隆起してきたかのような一体感を創り出したのである。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)巨大な岩のオーバーハング(張り出し)の下を通り抜ける遊歩道。
巨大な岩のオーバーハング(張り出し)の下を通り抜ける遊歩道。岩石は「礫岩」と呼ばれる、丸い石が砂や泥で固まったもので構成されている。道沿いには石造りの低い手すりが設けられ、岩の質感と一体化した景観を形成している。

さらに、ガウディは修道院の大聖堂内部の改修にも着目していた。彼は、黒いマリア像が鎮座する内陣の照明や装飾において、いかにして神秘的な光を演出するかについて数々の助言を残している。彼にとってモンセラットは、自身の信仰の拠り所であると同時に、サグラダ・ファミリアという「祈りの塔」を完成させるための巨大なインスピレーションの源であった。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラット修道院の大聖堂内部の全景。
モンセラット修道院の大聖堂内部の全景。19世紀後半にネオ・ロマネスク様式で再建されたこの空間は、カタルーニャ教会の威信をかけた建築芸術の結晶であり、圧倒的な規模を誇る。

19世紀後半、ナポレオン軍の侵攻によって修道院の建物の多くが破壊された際も、カタルーニャの人々は「山そのものが神殿である」という信念を捨てなかった。ガウディもまたその精神を継承し、人工的な建築物をいかにモンセラットの自然な造形美に近づけるかという課題に生涯を捧げたのである。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)19世紀後半、ナポレオン軍の侵攻によって修道院の建物の多くが破壊された際も、カタルーニャの人々は「山そのものが神殿である」という信念を捨てなかった。

アントニ・ガウディにとってのモンセラット

アントニ・ガウディがモンセラットに対して抱いていた想いは、単なる美しい風景への感嘆ではなく、彼の人生観や宗教観、そして建築学的な野心が複雑に絡み合った非常に深いものであった。ガウディは、モンセラットの岩山を「神が彫り上げた建築」と見なしており、その構造について「この山の形には無駄が一切なく、垂直性と安定性が完璧な調和を保っている」と専門的な視点から評価していた。

彼は、重力に従って自然に形成された岩のラインこそが最も力強く、かつ美しいものであると確信しており、その構造を数学的に解析しようと試みていた。この執念とも言える観察眼が、後にサグラダ・ファミリアで採用される「懸垂線(逆吊り模型)」の理論、つまり自然界の法則を建築に応用する画期的な手法へと繋がっていった。

また、ガウディはモンセラットを「カタルーニャの精神的な屋根」であるとも表現していた。彼はこの山の険しい地形を、巡礼者が信仰心を試される試練の場として捉えており、自らが設計した記念碑の周囲の整備においても、あえて過剰な装飾を排し、岩肌そのものを主役にするよう指示した。彼は、人間が作るどんなに立派な彫刻も、神が創造したモンセラットの巨大な岩塊の前では影に過ぎないと考えていたため、自らの作品をいかに自然の中に「隠す」か、あるいは「同化させる」かという、通常の建築家とは正反対の苦悩を抱えていたと言われている。

さらに興味深いのは、ガウディがこの山の音響効果についても着目していたという点である。彼は、モンセラットの岩々に反響する風の音や聖歌隊の響きを聴き、サグラダ・ファミリアの内部を「森の中のような静寂と、岩山のような響きを併せ持つ空間」にしたいと熱望していた。彼にとってモンセラットは、視覚的な造形だけでなく、音や光、そしてその場の空気感に至るまで、自身の建築に移植すべき完璧な環境そのものであった。

ガウディが晩年、サグラダ・ファミリアの建設現場に住み込み、世俗との関わりを断った際も、彼の心の目には常にモンセラットの山影が映っていたと、当時の弟子たちは回想している。彼は自分の命が尽きても、サグラダ・ファミリアがモンセラットのように「何世紀もかけて成長し続ける祈りの山」になることを願っていたのである。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)アントニ・ガウディにとってのモンセラット

ハイキングコースで巡る モンセラットの自然と信仰

モンセラットには、初心者から上級者まで楽しめるハイキングコースが主に5つから8つほど整備されている。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)広場にある「自由の泉」と呼ばれる水飲み場。
広場にある「自由の泉」と呼ばれる水飲み場。カタルーニャの旗の線を思わせる赤と黄色のタイル装飾が施され、複数の蛇口が並んでいる。モンセラットの山から湧き出る水は古くから聖なる水として尊ばれてきた。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)カタルーニャ中央ユネスコ世界ジオパークの広域案内図。
カタルーニャ中央ユネスコ世界ジオパークの広域案内図。

もっとも手軽なのはサン・ミケル十字架への道である。修道院から片道約15分から20分ほどで到着できる緩やかなコースで、十字架が立つ展望スポットからは、切り立った岩壁を背にした修道院の全景を真正面から眺めることができる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)聖洞窟へと続く「祈りの道」の階段。
聖洞窟へと続く「祈りの道」の階段。道沿いにはキリストの生涯をテーマにした「ロザリオの十五の神秘」を表す彫刻が並んでいる。こうした屋外に宗教的な彫刻を配置した巡礼路は、日本の四国八十八ヶ所の石仏や、参道の丁石などにも通じる精神的な文化景観といえる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)遊歩道脇の窪みに設置された、キリスト受難の場面を再現した白い彫刻。
遊歩道脇の窪みに設置された、キリスト受難の場面を再現した白い彫刻。背後に大きな十字架を背負い、手枷をはめられたキリストと、それを見守る人物が彫られている。これらはガウディやスビラックスといったカタルーニャを代表する芸術家たちが手がけたものも含まれる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)
バルセロナ モンセラット(Montserrat)山中の遊歩道沿いに設置された、キリストの受難をテーマにした現代的なレリーフ。
山中の遊歩道沿いに設置された、キリストの受難をテーマにした現代的なレリーフ。ジョセップ・マリア・スビラックスなどの著名な芸術家による作品群の一つ。

次に人気なのがサンタ・コバ(聖洞)への道である。ここはモンセラットのシンボルである黒いマリア像が発見されたとされる伝説の洞窟へ続く道で、片道約40分ほどかかる。道中にはガウディなどの芸術家が手がけた彫刻が並んでおり、巡礼の道としての雰囲気も楽しめる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)修道院から周辺の聖堂や展望台へと続く石造りの遊歩道。
修道院から周辺の聖堂や展望台へと続く石造りの遊歩道。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)岩壁に設置されたキリスト像と、カタルーニャの紋章を模したモザイク画。
岩壁に設置されたキリスト像と、カタルーニャの紋章を模したモザイク画。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)黒いマリア像が発見されたとされる伝説の洞窟へ続く道。
黒いマリア像が発見されたとされる伝説の洞窟へ続く道。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)岩山の斜面に建つサンタ・コバ(聖なる洞窟)へと続く礼拝堂。1
岩山の斜面に建つサンタ・コバ(聖なる洞窟)へと続く礼拝堂。17世紀に建設されたこの場所は、モンセラットの黒いマリア像が発見されたという伝承が残る聖地であり、多くの巡礼者が訪れる。

平坦な道をゆっくり歩きたい場合にはデゴタルスの道が適している。修道院の裏手に続く木々に囲まれた静かな遊歩道で、片道約30分ほどである。アップダウンがほとんどなく、途中の岩壁からは水が滴り落ちる様子や、遠くピレネー山脈まで見渡せる絶景を楽しむことができる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)ふもとの駅と修道院を結ぶアエリ(ロープウェイ)の到着地点付近。
ふもとの駅と修道院を結ぶアエリ(ロープウェイ)の到着地点付近。標高の高い場所を走るトレイルコースも整備されており、徒歩や公共交通機関を組み合わせて広大な山域を探索できる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)本格的に山を楽しみたい場合には、最高峰を目指すサン・ジェロニーへの道が推奨される。

本格的に山を楽しみたい場合には、最高峰を目指すサン・ジェロニーへの道が推奨される。修道院から往復で約3時間から4時間かかる本格的なコースであるが、標高1,236メートルの山頂からはカタルーニャ地方を一望する360度のパノラマが広がる。フニクラ(ケーブルカー)でサン・ジョアン駅まで上がってから歩き始めることで、登りの負担を減らすことも可能である。

さらに、かつて隠遁者が暮らしていた小さな庵の跡を巡る「隠者の道」と呼ばれるルートもある。これら複数のコースを組み合わせることで、体力や滞在時間に合わせて自分なりのハイキングを楽しむことができる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)垂直に切り立った巨大な岩壁の割れ目から自生する1本の木。
垂直に切り立った巨大な岩壁の割れ目から自生する1本の木。土壌がほとんどない過酷な環境に根を張り、光を求めて空へと伸びる生命力の強さが示されている。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラットの岩肌や石垣の隙間に生息する小さな植物と苔。
モンセラットの岩肌や石垣の隙間に生息する小さな植物と苔。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)

急勾配を克服するユニークな乗り物

モンセラットでは、険しい岩山という地形を活かした非常にユニークな乗り物がいくつか稼働している。麓から修道院へ向かうための手段と、修道院からさらに高い場所や聖なる場所へ移動するための手段に大きく分けられる。

まず、麓から修道院のある標高約720メートル地点まで登る主要な乗り物は、登山鉄道とロープウェイの2つである。登山鉄道(クレマジェラ)は、急勾配を登るためにレールの間に歯車を噛み合わせる「ラック式」を採用している。モニストロル・デ・モンセラート駅から出発し、約15分から20分かけてゆっくりと山を登る。大きな窓からは、徐々に近づいてくるモンセラットの岩山の全景を安全かつ快適に楽しむことができ、家族連れや落ち着いて景色を眺めたい層に利用されている。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)モンセラット登山鉄道の車両が修道院駅のホームに停車している様子。
モンセラット登山鉄道の車両が修道院駅のホームに停車している様子。2003年に再開通した比較的新しいラック式鉄道で、麓の駅から山上の聖域までを結んでいる。車窓からはカタルーニャの平原を一望できる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) 山肌に沿って敷設された線路を走るモンセラット登山鉄道の全景。
山肌に沿って敷設された線路を走るモンセラット登山鉄道の全景。急な斜面を安全に走行するため、レールの中間に歯車が噛み合うラックレールが採用されている。

もう一方のロープウェイ(アエリ)は、アエリ・デ・モンセラート駅からわずか5分ほどで修道院へ到達する。黄色いキャビンが特徴で、非常に急な角度で一気に上昇するため、スリルとともに対岸のパノラマや眼下の絶壁をダイレクトに感じることができる。短時間で移動したい場合や、空中からの絶景を楽しみたい場合に適している。

バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラット山の険しい斜面を登る黄色い車体のロープウェイ。
モンセラット山の険しい斜面を登る黄色い車体のロープウェイ。サンタ・マリア・モンセラット修道院へと向かう主要な交通手段の一つで、1930年に開業した歴史を持つ。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) 修道院に到着した後、さらに上を目指したり別のエリアへ移動したりするために稼働しているのが、2つのケーブルカー(フニクラ)である。

修道院に到着した後、さらに上を目指したり別のエリアへ移動したりするために稼働しているのが、2つのケーブルカー(フニクラ)である。サン・ジョアンのケーブルカーは、修道院からさらに高い標高1,000メートル付近まで一気に登る。最大傾斜が65度という非常に急な斜面を走るのが特徴で、車両の屋根までガラス張りになっているため、登るにつれて修道院が小さくなっていく様子を真上から見下ろすことができる。到着地はサン・ジェロニー最高峰へ続くハイキングコースの起点にもなっている。

もう一つのサンタ・コバのケーブルカーは、逆に修道院から少し下った場所にある「聖洞(サンタ・コバ)」への入り口までを結んでいる。歩くと険しい下り坂をショートカットできるため、黒いマリア像が発見された伝説の洞窟を訪れる巡礼者や観光客に重宝されている。

バルセロナ モンセラット(Montserrat) 緑色の車体が特徴的なサン・ジョアン・フニクラというケーブルカー。
緑色の車体が特徴的なサン・ジョアン・フニクラというケーブルカー。修道院のあるエリアからさらに高い標高地点へと急勾配を登っていく。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラットの建物に見られる伝統的な石造りの建築様式。
モンセラットの建物に見られる伝統的な石造りの建築様式。赤茶色の瓦屋根と石を積み上げた柱が並び、カタルーニャ地方の古い修道院の雰囲気を残している。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) 修道院の敷地内にある石柱の並ぶ回廊のような通路。
修道院の敷地内にある石柱の並ぶ回廊のような通路。自然の岩肌をそのまま生かした壁面と、石を積み上げて作られたベンチが一体となっている。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラットの麓と山頂付近を結ぶロープウェイ、アエリ・デ・モンセラット(Aeri de Montserrat)の駅舎。
モンセラットの麓と山頂付近を結ぶロープウェイ、アエリ・デ・モンセラット(Aeri de Montserrat)の駅舎。黄色い看板が目印で、1930年に開業した歴史ある乗り物であることを示している。

山上での食事と休息、ショッピング

飲食店は、石造りの落ち着いた空間でカタルーニャ料理を味わえるレストランから、絶景を眺めながら好きな料理を選べるビュッフェやカフェテリアまで揃っている。サッと食事を済ませたい場合にも、景色を楽しみながらゆっくりしたい場合にも対応できるのが特徴である。

土産物店は、修道院のリキュールや焼き菓子を扱う大きなショップのほかに、地元の農家がチーズや蜂蜜を並べる露店がある。特に露店で売られているフレッシュチーズは、その場で食べられる名物として親しまれている。

ホテルは、修道院のすぐ隣にある歴史的な建物が中心である。派手な設備はないが、観光客がいなくなった夜の静寂や、朝日に照らされる岩山を独り占めできるのが最大の魅力といえる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラット修道院の全景と、背後にそびえ立つノコギリ状の奇岩群。
モンセラット修道院の全景と、背後にそびえ立つノコギリ状の奇岩群。長い年月をかけて浸食された礫岩が独特の形状を作り出しており、その麓に張り付くように聖堂が建てられている。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラットの広場にはベンチがたくさんあるため、岩山の景色を眺めながら持参した軽食をとるのも、朝の清々しい空気を感じられて有益である。

もしバルセロナ中心部を朝一番の電車(6時台や7時台)で出発して、現地に8時台に到着するようなスケジュールであれば、バルセロナの駅であらかじめパンや飲み物を買っておくのがもっとも確実である。モンセラットの広場にはベンチがたくさんあるため、岩山の景色を眺めながら持参した軽食をとるのも、朝の清々しい空気を感じられて有益である。

バルセロナ モンセラット(Montserrat)

モンセラット美術館(Museum of Montserrat)

モンセラート美術館は、修道院の広場に隣接するカタルーニャ屈指の美術館で。もともとは聖書研究の資料を展示する目的で設立されたが、現在はピカソ、ダリ、モネ、エル・グレコといった巨匠の絵画から、古代エジプトのミイラ、メソポタミアの考古学遺物まで、約1,300点以上の幅広いコレクションを収蔵している。特に19世紀から20世紀のカタルーニャ現代美術の充実ぶりは目覚ましく、静謐な空間で質の高い芸術に触れることができる。

バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラット美術館(Museum of Montserrat)

モンセラット日帰りプランのモデルケース

08時30分 スペイン広場駅を出発 カタルーニャ鉄道(FGC)に乗車。チケットは駅の券売機で購入できるが、移動と観光がセットになった「トランス・モンセラット」などのセット券も便利である。

10時00分 黒いマリア像の拝観(※要事前予約) 到着後、まずは予約した時間枠に従って黒いマリア像を拝観する。予約時に指定したタイムスロットを守る必要があるため、移動時間を逆算して予約を入れるのがコツである。

11時00分 大聖堂(バシリカ)の見学(※要事前予約) 黒いマリア像のチケットには大聖堂への入場が含まれていることが多いが、ミサの時間などは一般の見学が制限されることがあるため、静かに内部を巡る。

12時00分 サン・ミケル十字架へのミニハイキング 合唱団の開演まで少し時間がある場合、往復40分ほどの軽い散歩で絶景を楽しむ。修道院全体を見下ろす写真が撮影できる。

13時00分 少年合唱団「エスコラニア」の鑑賞(※要事前予約) 世界的に有名な歌声を鑑賞する。現在は合唱鑑賞専用のチケットが必要であるため、必ず事前に確保しておく必要がある。

14時00分 ランチタイム 展望レストランやカフェテリアで食事をとる。また、広場近くの露店で地元のフレッシュチーズ「マトー」をデザートに買うのも楽しみの一つである。

15時00分 ケーブルカーでサン・ジョアン展望台へ ケーブルカー(フニクラ)でさらに標高を上げ、岩山の頂上付近を散策する。ここでの絶景は予約不要で、運行時間内であればいつでも利用可能である。

16時30分 下山・お土産探し 名物のリキュールや焼き菓子をショップで購入し、バルセロナへの帰路につく。

訪問日が決まったら、すぐにモンセラット修道院の公式サイトで黒いマリア像と合唱団のセットチケットを確認することが推奨される。鉄道の往復券が含まれる「トランス・モンセラット」などの交通パスには、マリア像や合唱団の予約権は含まれていない場合が多いため、入場予約は別途行う必要がある点に注意が必要である。

バルセロナ モンセラット(Montserrat) 標高の高い場所に位置する展望スペース。
標高の高い場所に位置する展望スペース。設置されたベンチからは、モンセラット特有の奇岩群や遠くに広がる平野部を一望できる。
バルセロナ モンセラット(Montserrat)
バルセロナ モンセラット(Montserrat) 建物の外壁に取り付けられた2体の彫像。
建物の外壁に取り付けられた2体の彫像。モンセラット修道院の歴史に関わる人物を象徴しており、素朴ながらも独特の表情が印象的。
バルセロナ モンセラット(Montserrat) モンセラットの山域で見られる鮮やかなオレンジ色の花。
モンセラットの山域で見られる鮮やかなオレンジ色の花。

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